壁を自ら作って悩んでいたのかもしれない

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　 シンガポールにある購買部で天然ゴムの品質管理を担当している私の部下はみんな現地で採用された人たちです。
　 赴任してから私が続けてきたのは 「ロボット症づくり」だったと組革研でわかりました。 そして 「ソニー厚木工場のトイレ掃除の話」をうかがい、そんな職場を目指すと心に決め、取り組みはじめました。
　 しかし、想定以上に言葉が通じない障壁は高い。 手取り足取り教えていた頃に比べると明らかに業務が捗らない。 さらに当時の私は、何も教えてはいけないと思い込み、彼らがまったく思いも及ばない範囲、例えば、この工場の状況についてまで何も話さず、彼らに考えさせようとしていました。
　 他部署から遅れの指摘が続き、私自身も身動きが取れなくなりました。 そして遅れを取り戻そうとするうちに、いつの間にか、自らやってしまう、教えてしまうという以前のやりかたに戻ってしまいました。
　 ようやく、自分が教えないやりかたに固執していたことに気づきました。
　 一からやり直し。 まず、彼らがまったく知らないことは教えるしかないと割り切りました。 それ以上に大事なのは、部下をよく見て、彼らが何に困っているかを掴むこと、そして感じたままを素直にさらけ出していくしかないと思い、それに注力しました。
　 しばらくすると、自分自身に変化を感じました。 自分の体裁を省みず、ありのまま接していくと決めてから、些細なことでも彼らが何かに気づいたり成果に繋がったりした場面で、自分のことのように嬉しくなってきたのです。 これまで抵抗のあった 「よくやってくれた」と彼らを褒める言葉も、そんなことを意識するまえに自然に口に出てくるようになりました。
　 言葉が通じないことを障壁としてしか捉えられなかった頃の私は、それ以上の壁を自ら作って悩んでいたのかもしれません。