部下が「図面をください」と言うようになった

「いいな」と思われたら押してください。

　鋼構造物の溶接作業を行う部署にいます。溶接は図面の指示に従って行わなくてはいけませんが、私は部下たちに図面を渡したことがありませんでした。彼らが溶接を行う予定の総ての箇所に、私があらかじめ図面の指示を書き移していたからです。作業の効率を上げるために、図面を見て考える手間を省いてあげているつもりでした。
　「わからない」と言われればすぐに教え、「難しくて作業ができない」と言われると私がやってあげていました。
　仕事はやっているうちに自然に覚えるだろうと思っていましたが、部下たちは何度教えても同じようなミスをくり返すことが多く、私は「何とかならないものか」と悩んでいました。
　部下に考えさせない自分にこそ問題があるのだと、組革研に参加して気づきました。彼らが自分で仕事をすすめられるようにしなくてはいけないと考え、職場に戻ると、「今後は各自で図面を読み込んで、溶接箇所に自分たちで作業指示を書き込むように」と伝えました。
　彼らは、まともに見たことのない図面を手に戸惑い、すぐに「わからない」と聞いてきました。しかし私は、図面をもう一度よく見て実物と照らし合わせて考えるように伝え、できるようになるまで辛抱強く待ちました。
　このようなすすめかたを続けていると、部下の方から「図面をください」と言ってくるようになり、これまで敬遠しがちだった難しい作業でも「前回失敗してしまいましたが、もう一度挑戦していいですか？」と自ら取り組むようになってきました。横どうしで相談しながらやりかたを覚えコツを摑むようになると、それが自信になって次にチャレンジする意欲を生み出しているようです。