自分で考える力を取り戻す

「いいな」と思われたら押してください。

　職場では、新入社員に対して先輩が３年間コーチ役を務めることになっています。入社３年目の若手が開発テストの計画書を持ってきたときのこと、計画に不備はありませんでしたが何か腑に落ちないものを感じました。
　その後、テストは成功。ところが実施した本人に「うまくいった理由は？」と尋ねると黙り込んでしまいました。このとき、彼が一から十まで先輩の指示どおりに行っていたことに気づきました。コーチ役の先輩社員には以前から「早く仕事に慣れさせろ」と指示していましたが、その結果、考えさせることが疎かになっていたのです。
　私は彼に新たなテストの課題を与え、一人ですすめさせることにしました。計画書にテストの必要性や方法、予測される結果について詳しく記載するように伝えましたが、やはりきちんとは書けません。基本に戻ろうと考えて「わからないこと」を書き出させましたが件数は少なく、いかに自分で考える力を奪ってしまっていたかとショックでした。
　わからないことを調べるように言っても「どうしましょう？」と聞いてくるので、「まず、自分で考えてみること」と答えました。その後もこのようなやり取りをくり返すうちに、テスト予定日が近づいてきました。
　私への相談回数が減ってきていたので心配していると、他部署の人から、彼が関連部署に足を運んで質問して回っていると教えてもらいました。また、この頃から、相談に際して「こうしようと思うのですが」と言ってくるようになりました。
　その後、何とか自分なりに考えてすすめたテストを終えると、彼はその過程を分析して、すぐ次のテストの準備を始めていました。少しずつ動き始めた彼の姿に、部門の将来が見える気がします。