部下たちはどんな思いで仕事に取り組んでいたのか

「いいな」と思われたら押してください。

　私たちの部署では、電子機器に組み込む高機能部品の改良や新規開発をすすめています。
　開発に取り組む際、「まずはこの辺りから始めよう。課題１の検討はＡ君、課題２はＢ君に」と分担を決め、その後、部下から「結果が思わしくありません。次はどうしましょうか？」と相談されると、「じゃあ、次はこうやってみて」などと対応策を決めて指示していました。
　若い頃を思い起こすと、割り振られた仕事でも決まりごと以外は自分で納得いくようにすすめたものでした。部下を持つようになってからは、効率よく成果をあげようと作業のすすめかたを事細かに指示してきましたが、彼らがどんな思いで取り組んでいるかを気にしたことはありませんでした。
　組革研に参加すると、リーダーからの指示がほとんどなく自分たちで考えてすすめざるをえない中で、いつの間にか課題に正面から取り組むようになり、結果を出せたときに何とも言えない達成感がありました。
　職場を振り返って、部下たちは仕事でこんな思いをしたことがあるだろうかと不安になりました。そしてその後は、部下から「どうしましょうか？」と聞かれても、「お客様にとってはどうだったらいいかな？」などと尋ね返して、自分なりの案を考えてから来るように伝えました。
　すると、以前は私に相談ばかりしていたある部下が、その後しばらく何も言ってこなくなりました。私は心配になり担当業務の進捗を尋ねてみると、「実は製品についてお客様にお聞きしたところ、こういうことで困っていると教えていただきました。開発の方向性をこのように見直す手もあるのではないでしょうか？」と答えたのです。彼の真剣なまなざしからは、自分の問題として正面から取り組んでいることがひしひしと伝わってきました。