部下を「許して」ダメにしていた

「いいな」と思われたら押してください。

　私は、現場で作業員たちが頑張っている姿に、「少しぐらいのミスや見逃しでガミガミ注意したら可哀そうだ」と考え、失敗をしてもきついことを言わないようにしてきました。
　しかしいつの間にか、同じ不良が続いたり、その規模が大きくなっても「出てしまったものは仕方ない。次はもう少しきめ細かく確認しましょう」というぐらいにしか言えなくなっていました。
　「部下や同僚をダメにしている！」。組革研で聞いたこの一言に、部下に嫌われるのを恐れて、言うべきことを言わずに済ませてきた自分の弱さを気づかされました。
　本来、製造現場では決して不良を出さないという意識を持ち続けないと良い製品がつくれないのはあたり前です。そういう厳しさから部下を逃がすのを止め、正面から向き合おうと決めました。
　「この製品の傷はどういうこと？」
　「刃物の摩耗によりスジっぽいのが出てしまいました」
　「出てしまったではなくて、どうしたら出なくなるのかを考えてよ」
　「刃物の交換を早くします」
　「すぐ再発するんじゃないか？　なぜ摩耗したかよく調べてみてよ」
　最後まで引き下がらずにいると、部下はしぶしぶですが、様々な条件での試験切削を始め、現在の加工方法に問題がないかを調べるようになりました。まだ決定的な改善には至らず、彼は現在も模索し続けています。
　部下はこれまで、何かあるとすぐ人に聞いたり思いつきで対応することが多かったのですが、自ら改善策を探るなかで、自分の力で何とかしなければという姿勢になってきたと感じています。