部下がどんどん変わっていった

「いいな」と思われたら押してください。

　設備故障や不具合品が発生すると、どうすればよいかと部下が聞いてきます。私は過去の経験から「こうしよう」とすぐに指示を出していました。
　同じ問題が発生してもまた私に対策を聞きに来るので、「どうしていつまでも覚えないのだろう？」と不満に思っていました。しかし、組革研でロボット症の話を聞き、部下から考える機会を奪っていたのは私だったことにやっと気づきました。
　その後、部下が対策を聞きに来ると「どうしてそうなったのか？」と聞き返すようにしました。「わかりません」と即答する彼に「設備の動きに異常はないのか？」「材料に異常はないのか？」とさらに尋ねました。しかし、これまで私がすぐ対策を指示してきたのですから、現場の状況をつかんでいるはずもありません。私は「問題が起きている部分だけではなく、周りの状態も確認するように」と伝えると、彼は現場を確認しに行きました。
　このようなやり取りを何度かくり返すと、彼は発生した現象に関係すると思われる要因を総て報告するようになってきました。
　そのうち、彼なりに考えた対策を提案してくるようになり、私は、解決に至らなそうでも大きな問題にならない限り、「一度やってみるように」と伝えました。うまくいかなかった場合は一緒に現場へ行き、どうしてダメだったのかを現物を見て調べました。
　あるとき彼が報告に来ました。「問題が発生しました。原因は材料が１ミリほど厚いことだと思われたので、圧力で調整してみました。完成した物をいくつか確認しましたが、問題は発生していません」。
　彼は状況を調べて対策を考え、自分の力で見事に問題を解決してみせたのです。