依頼者とともに現状を明らかにした

「いいな」と思われたら押してください。

　「タイヤ製造のシステムを二日後までに至急修正してほしい」とタイヤ設計部から依頼されました。このシステムは、設計者がタイヤを構成する部材や寸法を指示するためのものです。基準に合ったタイヤをつくるためのルールが組み込まれ、不適切な指示はエラーとなるようにしてあるのですが、そのエラーが出ないようにしてほしいと求めてきたのです。
　依頼は内容に間違いがなければ半日で対応できるものでした。しかし私は、どんなに急ぎの依頼でもその背景や根拠を調べ、明らかにすることを第一にすべきだと考えていたので、まずは背景を尋ねてみました。
　すると、特殊な設備で汎用品を作れるようにするためのシステム変更だということがわかり、指定された箇所を修正するだけで十分なのかと疑問に思いました。
　依頼者の切羽詰まった様子から、早く修正に取りかからなければと私も焦りましたが、「対象となる設備の状況をもう一度調査してもらえないか」と訴えました。彼は困惑していましたが、「私もできる限りのことはやりますから」と伝えて急ぎ調べてもらうことにしました。
　調査開始後しばらくして、依頼者から「先に依頼した箇所のほかにも修正が必要かもしれない」と連絡がありました。追加調査の結果、急ぐ必要のない問題だとわかりましたが、よく調べずに言われたとおりの修正をしていたら、設備の稼働に間に合わなかったかもしれません。
　これまで依頼を受けた際には、その内容の確認や修正するシステムの現状、関連部分への影響などを調べたうえで作業に取りかかるようにしてきました。一見、遠回りのようでも、確認不足でやり直しになるよりよほど近道なのだとつくづく思いました。