こんなに「わからないこと」があったのか
――もっともっとの「わからないこと」から発見（後編）

「いいな」と思われたら押してください。

　またしても振り出しに戻ってしまい、みんな落胆を隠せません。当の彼は、「もう何していいかわからん」と投げ出しそうな様子です。私は、「解決できるのはあなたしかいない！」と、再び迫りました。
　私は、彼がこれまで調べた事実の「一覧一望」と壁に貼り出された「わからないこと」の両方を見直すことにしました。するとそこには、都合のいい仮説や対策ばかりが並んでいるのです。これでは今までと同じだ、彼に丸投げしてしまった自分を責めることになってしまいました。
　そこで私は、もう一度「一覧一望」からやり直すことにしました。彼が貼り出したもの一つひとつに、それは事実かと問いながらすすめ、やっとのことで貼り終わることができました。次に、それを見ながら「わからないこと」を出すのですが、思い込みが強い彼には、なんでもいいから数多く出すことだけを求めました。
　最初のうちは、前回と同じ対策や推測ばかりが出されます。「もうこれくらいしか出ない」と弱音を吐く彼に、私は「もっともっと」と許さずに数を求めました。
　苦し紛れに捻り出したものの中に、ようやく問題の事象はどうなっているかを捉えた「わからないこと」が出てきたのです。数多くの「わからないこと」を目の前に彼は、こんなに「わからないこと」があったのか、と自分でもびっくりしています。
　それを整理していくと、えっと唸るような事柄に気が付きました。これらを明らかにしようとさっそく試験に取りかかり、見事に問題の事象が発見できたのです。その後、試行錯誤を重ねながら製品開発に成功、役員から太鼓判を押され商品化へ向けて加速しています。