国が違っても、状況が人を動かすことを実感した

「いいな」と思われたら押してください。

　 組革研の参加は１５年まえ、冬の冷たい雨の中、「Ｓ－２０」の仕組みを解明するために道と交差点を片っ端から計測したことを鮮明に覚えています。
　 測ることに何の意味があるのかとはじめは思いましたが、すすめていくとある仮説が頭に浮かびました。 さらに調べるとそれが正しいと現場で確信できたのです。 その時の喜びはそれまで味わったことのないものでした。
　 現在、シンガポールの造船所で海洋構造物の建造に携わっています。 自分でものづくりをする立場から工事を監督する発注者に立場が変わりました。
　 しかし今でも毎日、現場の様子を見て回っています。 そのたびにミスやトラブル、改善しなければならない箇所が目に付いてしまいます。 現場の活動や効率化は造船所の仕事で発注者の業務範囲外ですが、そのまま放置するわけにはいきません。 「教えない、指示しない」 という組革研の教えとは反対に、 「ここが悪い。 こう直せ」 と具体的な指摘を最初はくり返さざるを得ませんでした。 しかし彼らはミスやトラブルの修正に対応するものの、それらを生み出す状況に積極的に目を向けようとはしませんでした。
　 それでも５か月が経過した頃、以前に指摘された状態を現場の人たちが変えている場面を見かけました。 切断後の部材をどう仕分けるかという、日本では当りまえの小さなことでしたが、それ以降も彼らの動きを見ていると、配置場所の表示方法など、彼ら自身が工夫して変えている場面を少しずつ見かけるようになりました。
　 かつての現場の状態と指摘されて変わってきた今の状態の違いを自分たちが実感し、 「なぜ改善しなければならないか」 「そのために何が必要か」 を彼らが考えて実行するようになりました。 その姿を目にして、国は違っても、指示されて動くのではなく、状況が人を動かすことを実感しました。