部下が提案を言い出せる環境になっていなかった

「いいな」と思われたら押してください。

　私は中国の工場で品質関係の責任者を務めています。３年まえの組革研以来、現地現物の大切さを大事にして取り組みながら、その都度、私が思っている以上の力を部下が持っていることに気づかされてきました。
　この工場の製造過程で起こっていたトラブルを無くすため、使用する材料を正確に照合できるようにするという課題に取り組むことになりました。まず部下たちに完成イメージを説明し、さっそく現場でのプロジェクトが開始されましたが、テストのために設備を停止することはできない、人手がもっと必要だがその余力がないなど、苦情が次つぎと出てきました。
　他部署との調整が必要なこの問題に部下たちだけでは解決できず、けっきょく上長である私が決定し、調整することになりました。
　その後すすめていくと、今度は、機械だけでは自動照合できず、人による手直しが必要になるという問題が起こりました。それを伝えてきた部下と一緒に現場に行くと、少し設備の配置を変更するだけで簡単に解決できそうに思われました。「どう思う？」と彼の考える解決案を聞いてみると、自分の考えとまったく同じです。「なぜそれをすぐに実行しないのか」と聞くと、「何かあった時に自分は責任を取れないから」という返事でした。
　組革研後は、部下が仕事を自分の問題にし、自身で考えさせることを大事にしてすすめてきたつもりでしたが、海外では責任の所在が強く問われるために最後は上からの決定を待つことが多いのです。彼らが自ら考えた提案を言い出してほしいと願いながら、未だにそういう環境にはなっていなかったと痛感しました。
　海外では思いがなかなか伝わらないと感じる場面が多いですが、仕事を部下自身の問題にすることを、諦めずに続けていきたいと思っています。