キャンパスリーダーの独り事

「うつ」と「ロボット症」の蔓延は同根だ  No.226

no.226CL.jpg ウイルス禍に気遣う最中ですが、企業の人たちに早々にアピールしたくて、このコラムをお届けします。
 と申しますのは、1年ほど前から続けてきた𠮷野聡医師と私との対談の核心です。𠮷野医師は、精神科の研究者であると同時に臨床医として指導的立場にあり、130社の産業医の任にある人です。
 私が予てより公言し続けてきた今日の人間の「ロボット症」、即ち多くの人たちが「人間力」をフリーズさせ、ロボットらしくに “変身” したかのような状態、総ては教えられ、指示されないと動けなくなりつつある実態の氾濫。𠮷野先生が日夜にわたって激闘されている企業内の人たちの「うつ状態」の蔓延。
 この二つの人間現象に潜んでいるものは、見かけ・症状こそ異なれどそれを生み出していく底流の本体は一体ではないのか、と睨んだ(らしい)大屋裕靖さん(NXPジャパン・人事本部長)のサゼッションをきっかけにして実現した対談であります。
 5回にわたる対談を終え、本にすべく校了直前になってこのウイルス禍が勃発してしまいました。そのために130社をも抱える𠮷野医師は睡眠時間を削らざるをえない超繁忙の渦中にあり、校了が儘ならないでいるのです。それによって、校了直前の対談の中味は𠮷野医師の机の上で息を潜め続けたまま、今時点では発刊予定を見通すことができないのです。
 そこで私が取りあえずこのコラムで、これまでの対談で勉強し、着目したポイントの核心部分を、以下にかいつまんで項目化し、お知らせいたします。私が医師でない故の曖昧さや大まかさ、それにややもすると我田引水になりかねないところには目をつぶってください。

1.日本は「うつ大国」になってしまった。

 現在の人びとの「うつ」罹患率は二十数パーセント。この20年間に2.9倍になっている。しかも企業に限れば、2006年以降、直近3年間での傾向は、増加と横ばいを合わせると84~91パーセントに達し、減少は10パーセントに止まっている。

2.「うつ」には「従来型うつ」と「新型うつ」がある。

 両者は似て非なるものだ。前者は、何事に対してもやる気を失い、脱力して起き上がることさえもできにくくなるというような症状。それに対して後者は、仕事では全くやる気が出ないが、遊びや趣味ともなれば一変して意欲が出てくるという症状。
 企業の中での「うつ」の割合は、前者は10パーセントくらいにすぎず、後者が90パーセントを占めている。にもかかわらず企業の中では、この両者がごちゃまぜになって扱われている。
 私は90パーセントの「新型うつ」を “うつもどき” と名付けた。ただし、学会の立場上にある𠮷野医師がこのネーミングに同意できるかどうか、今時点では定かではない。

[以下8項目は総て「新型うつ」に関するものである]

3.いずれの病でも同じだが、「うつ」の治療にも、共に不可欠な二つがある。一つは、負荷を軽減することによるストレスからの解放と薬物投与による「対症療法」。一つは、発症する原因にアプローチする「根本療法」。

 企業内の現状は、その100パーセントが前者の「対症療法」に始終している。
 𠮷野医師は、「対症療法」の場合の再発率はおよそ50パーセント、2、3年間での再発に限れば80パーセントを超える現状を非常に嘆いている。前者だけではもぐら叩きにすぎなくなってしまうわけだ。
 その上で同医師は、「うつ」は医学の領域だけでは本当には解決できないと訴えている。

4.後者の「根本療法」の中心は仕事における「裁量余地」の充実と「達成感」にある、と𠮷野医師は主張してやまない。私は同じことを「生きている実感」「己の存在感」と表現している。いずれもが「自己実現」に連なるものである。

5.だが、企業内の「人と組織」、私の言葉で言えば「人・仕事関係」即ち、人びとと仕事とのかかわり合いかた、それが「自己実現」には程遠いものにしてしまっているのだ。

6.「人・仕事関係」を支配するものがマネジメントである。そのマネジメントが、この国では「管理」になってしまっているのである。

 「人と組織」のマネジメント=「管理」だという、大誤解というべきか大錯覚というべきか、そこに、その立場にある人たちが気付いていないのだ。

7.その中軸となっているのが “3密” ならぬ「三逆リーダー」である。

 例えば、総ては、教えられ、指示され、世話をやかれ、それでもダメならば “上” が仕事を肩代わりしてくれる。そんな仕事とのかかわり合いの、どこに「裁量余地」「達成感」だの「生きている実感」「己の存在感」などの「自己実現」が有り得るのか。

8.多くの企業のマネジメントの立場にある人たちは、「人を大事に」「人を育てる」を口にして、実はその逆をやっていることにとんと気付いていないらしい。

9.「新型うつ」と「ロボット症」の「根本療法」の主役、それは精神科医ではなく、企業内のマネジメント立場にある人たちである。

10.以上の企業内の状況が人びとの「仕事力」を奪って日本経済の生産性をいかに落としているかは、たった一つ「組革研/デイリーメール」の中からだけでも明らかではないか。

20.4.28. 

藤 田 英 夫 

追記  上記とは直接関係ありませんが、𠮷野聡医師が『こころとからだの健康管理ハンドブック/新型コロナウイルスから自分や家族を守るために』と題する冊子を調えられました。
 この今の厳しい環境の中で、多くの人たちの心と体の健康を守りたいとの、同医師の思いから急ぎ用意されたものです。
 「ゲートウェイコンサルティング株式会社」のHPから入手できます。版権・著作権は設定されておりませんのでご自由にご活用されるよう、私からもお勧めいたします。

脱・「三逆リーダー」
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