キャンパスリーダーの独り事

「他力本願」の“初期設定”を自分で「自力本願」に
――横浜ゴムの新入社員たちが教えてくれるもの  No.221

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  去る2月の 「組革研」第517会期に横浜ゴムから、10か月まえに入社した22人 (平均年令25歳の院卒と学卒)の新入社員が参加し、その初期には見るからに動きのにぶかった彼らが、職場に戻るに際して残した言葉が、
  「できるできないではなく、やるかやらないかだ!」
  「苦労の先に楽しさがあるかわからないけれども、本当の楽しさというのは、絶対に苦労の先にしかないのだ!」
であったことを、このコラムの(No.219)で紹介した。
  私はリーダー、スタッフと共にこの発言に心満たされたが、同時にその裏側で、職場に戻れば元の木阿弥ではないかとの不安を抱いたままの帰りの新幹線を、今でも思い出す。
  では今、その彼らが職場でいかに動いているか? この号ではそれを紹介する。(社名・氏名とも敬称を略させていただいた)
  多くを紹介したいので、極々かい摘んでとならざるをえない。 そこから生じる記述の不正確さについてはここでは目をつぶり、いずれもが 「組革研/デイリーメール」に載ったものなので、正確にはそれをご覧願いたい。 (各人の記述の後にそのNo.を記した。今も断続的連載中)

 上司が驚くような存在になりたい 指示されたとおりに書類を作りデータをまとめ、時間がきたら退勤する。そのことに特に悩みも喜びもなく過ごしていました。まさに無味乾燥の毎日。
  そんな折に組革研に参加し、 「ロボット症は人間のだめな部分はそのまま残す。指示がないと不満を覚え、失敗したら指示が悪いと人のせいにする」と聞き、まさしく自分のことだと思い、恥ずかしくなってきました。
  いま、3か月間の工場実習に来ています。 ロボット症から脱却するため、 「○○が気になるので見せてください」と、現場に行って機械がどう動いているか、モノがどう流れているかを少しでも掴むように心がけています。
  見てもよくわからず、心が折れそうになります。 それでも、少しずつ現場のことがわかってくる。 その瞬間は何にも譬えがたい喜びです。 家に帰っても 「あそこはどうなっているんだろう」と気になって夜中に起き出してしまうこともありますが、先輩の指示に従うだけの退屈な日々に比べれば、 「毎日が楽しい」と胸を張って答えられます。
  時には易きに流され、この先の動きを先輩に求めてしまいそうになります。 しかしそのたびに 「お前はいまロボットになろうとしている。大脳が死んじゃうぞ」と自分に言い聞かせ、何とか踏みとどまっています。
  3か月後には、先輩や上司を驚かすような存在になりたい。(川口 玲 タイヤ第二材料部材料1グループ)No.1525

 面白くなかったのは自分が踏み出さなかったから 自分が「答え待ち人間」だったとは思っていませんでした。 その体質は、初めて自分の問題として仕事に直面した組革研だったから現れたのかもしれません。 昨年入社してから私は、職場でも毎日、一から十まで上司や先輩に指示を仰いでいたのです。
  「対象を捉える」 「指示待ちからの脱却」を自分の課題として、具体的に取り組んでいます。
  それまで単なる苦痛だった業務も、とても楽しくなってきます。 今まで面白くないと感じていたのは、自分が踏み出していなかったからです。(伊津野 翔 タイヤ第二材料部材料1グループ)No.1535

 「森にしかできない」と言われる存在になりたい 今後は、与えられた仕事を自分のものとして取り組むだけでなく、自分から仕事を見つけていかなければいけないと強く思いました。
  組革研後、わからないことは、その周辺知識を調べて頭に入れてから上司や先輩に尋ねるように変えています。 一度聞いたことは二度と質問しないことを自分に課しています。
  私が考えたプロセスが独自のものであったり、新たな視点だと感じられた時には、本当に嬉しく、これが上司を満足させることに繋がっていくのではと感じています。
  いつか 「これは森にしかできない」と言われる仕事を任される存在になりたいと思っています。(森 太陽 タイヤ研究開発部)No.1545

 「対象観」や「仕事観」に早く出会えたことを強みに ふり返ってみれば、上司の言うとおりにすすめていればいずれ結果が出るだろうと安易に考え、まったく自分事と捉えていませんでした。 性能向上に繋がるような技術や構造が見つからないわけです。 期待する結果が出ない日が続き、やる気も失っていました。
  まさに 「ロボット症」だったことを、組革研で気づかされました。
  これまで感じなかった疑問が浮かび、もっと知りたい、調べたいと感じるようになりました。 そのもとになったのは、 「付加価値をつけ貢献する」と組革研でうかがった仕事観です。
  これから何十年と続く社会人生活、その1年目で組革研に参加できたことはとても良かったと思っています。 
「対象観」や 「仕事観」に早く出会えたことを強みにして、自分の力を発揮していきます。(秋山直輝 TBR設計部設計1グループ)No.1549

 初めて真剣に自分に向き合う 私の頭を占めていたのは自分が周りに迷惑をかけないことだけ、その仕事の狙いや意図などまったく気にしていなかったのです。 そんな自分は 「ロボット症」だったと組革研でわかりました。 かなり重症です。
  間違いに気づいてから浮かんできたのは、このまま続けていて、果たして私は成長できるのだろうかという不安、社会人になってから初めて真剣に自分に向き合いました。(石渡淳恭 タイヤ第一設計部設計2グループ)No.1551

 最高のタイヤをつくる夢 入社してから10か月間、覚えてきたのは手順や方法でした。 知識は増えているのでしょうが、自力がついた気がちっともしない。 先輩の言うとおりに仕事をしているだけ。困ることは一切ないけど、つまらない。
  高をくくって参加した組革研で衝撃的な体験をしました。 頭を殴られた思いでした。 できるできないではなく、やるかやらないかです。 問題は当事者意識がない自分自身だとわかりました。
  配属先に戻ってからは自分のやるべき仕事だと思って 「わからないこと」を書き出してから始めてみると、アウトプットにこだわるようになりました。 今は必ず入念に自己チェックし、終わった後も不足点はないかを探すようにしています。
  自分の仕事と実感できている今の楽しさは、かつてはありませんでした。 もっと技術を身に付けて戦力になり、 「最高のタイヤをつくる」という自分の夢を実現したい。(蓬生健介 タイヤ第二設計部設計3グループ)No.1553

 自分の問題だと受け止めていなかった 組革研で、職場と同じことが起こりました。 調査に行くまえにしっかり仮説を立ててからと考えましたが、いざ現場で調べてみると、私の仮説は何一つ発見に繋がりません。 あれほど焦りを感じたのは初めてでした。
  職場での焦りはそこまでではありませんでした。 なぜかとふり返って違いに思い至りました。 職場では自分の問題として受け止めていなかったのです。
  タスク量は組革研以降かなり増えましたが、納期遅れすることなくすすめられています。 自分の考え、ツールを増やすことができています。 考えを持ち上司に質問するようになってから、より身に付くと気づいただけでなく、これまで耳にすることがなかった一段上のレベルの話を聞くこともできていると実感しています。(太田祐輔 タイヤ第一設計部設計1グループ)No.1556

 「わからないこと」を多く持つことが大事 やりきったとか頑張ったという思いが得られないまま毎日が終わっていました。
  そういう毎日を続けてきた私は、組革研で自分から動き出せない体質が見事に現われました。 いつかは誰かがやってくれると考えていたことは否定できません。 困っていれば、最後にはアドバイスやサジェスチョンがあったからです。 完全な 「指示待ち」 「答待ち」でした。
  もっと何かないかと考えることを目標に掲げた私に、体験を生かすチャンスが巡ってきました。 タイヤ製造の依頼書を更新することが主でしたが、一からの作成を任されたのです。
  過去の実績を調べながら多くの仮説を立てて、また調べる。 組革研での体験と同じです。
  良いものを求めるためには 「わからないこと」を多く持つことが大事だとやっとわかりました。 「タイヤがどうなっているか」を極めたいと思います。(西下仁人 タイヤ第一設計部設計3グループ)No.1558

 「この会社の柱になる」 「指示待ち」でした。憧れの部門で開発に携われることになったにもかかわらず、受け身のまま過ごしてきたのです。
  自分の有り様によっては、二度とこの業務に関わることはできません。 改めてそう感じると、1秒たりとも無駄にできないという切迫感が募ってきました。
  少しずつ、身体の中に知識や仕組みの内容が染み込み蓄積されていくことを毎日実感でき、私自身のモチベーションにも繋がっています。 気をつけているのは、言葉や上っ面の知識だけを覚えてわかったつもりにならないこと。
  組革研後、自分のなりたい姿を改めて思い描きました。 「この会社の柱になる」 「ADVANブランドを事業の大きな柱にする」。 今の自分は夢と意欲に溢れています。(長岡拓弥 MST開発部技術開発2グループ)No.1561

 本気じゃなかった 仕様書を見てわからない単語があってもスルー、後で調べようとか、急いで他の人に聞こうとは思わず、無意識に飛ばしていた。
  本気じゃなかった。 組革研で苦しさを経たうえの下期S-20で、ゴールできた時の達成感を知り、新入社員だからと甘えていた自分のダメさと 「対象」に少しでも近づくために本気で取り組むことの大切さがわかりました。 今までのように教えてほしいとは少しも思わず、何としてでも自分で解明していきたいと思えたのです。
  自分の変化に初めて気づきました。動き始めました。
  「こうかもしれない」をいくつか考えてから 「こうだ」という答えが見つかった時には、聞いてわかったつもりになっていた時には感じなかった確かさに自信が加わり、身に付いていることを実感できます。 自分は徐々に変わってきています。(則竹将志 TBR設計部設計1グループ)No.1563

 すうーっと染み込むように自分のものになっていく 今までの自分に呆れてしまいました。
  「個全」の活動は今まで感じたことのない達成感に繋がりました。 最初ははるかに遠く感じた仕組みに近づくイメージは、何段跳びかで階段を駆け上がるような感覚でした。
  組革研後、仕様書の中でわからないことを全て書きだすことから始めました。 やってみると、現場を見たことがない私にはわからないことだらけ。 早く見たい、調べたいと、これほど強く感じたのは初めてです。
  ようやく工場を見学する機会が得られました。 すうーっと染み込むように自分の知識になっていく感覚を味わってます。(大平晋吾 TBR設計部設計2グループ)No.1568

 喜びはその比ではない 自分の手抜き体質を痛感しました。 その後の調査は、自分でも驚くほど細かく調べるようになりました。 考察が仕組みの一部の解明に繋がった時、それまでしんどいとしか感じなかった仕事が、初めて面白いと感じられました。
  職場でも 「対象」を明らかにしていくと決めた私は、わかろうと思ってそれらを調べていくと、ますます疑問が多くなってくるのです。 くり返しこれに費やす時間は相当で、正直言って辛いのですが、わかったと思えた時の喜びはその比ではありません。(吉江 亮 タイヤ研究開発部)No.1571

 以前にはなかった充実感 自らすすんで 「ロボット症」を私は目指していたのです。 積極的に身に付けようとしていたのも 「道具力」だけでした。眠れないし身体も辛かったのになぜか課題が楽しい、と感じた組革研で腹に落ちました。
  「対象」を観る力をつけなければと思い、わからないことを書き出すこと、話を聞いたら必ず質問すること、そして調べてわかったことを手抜きしないで詳細に書き残すことを自分の課題にしました。
  うまくいくことよりうまくいかないほうが多い日々です。 その時は悔しいし情けない思いをするのですが、そんな失敗をくり返している毎日に、以前には感じなかった充実感を抱いています。(中嶋祐里 タイヤ第二材料部材料2グループ)No.1573

 自信を感じ始める 職場で楽しくなくなっていた理由がわかりました。 設計内容や数値を指示されるまま変更や記入をし、仕様書を発行する。 自分でほとんど考えないまま受け身で取り組んでいたからでした。
  組革研後、仕様書発行の目的やどうしてこの数字が記入されるのかを考え、その根拠を掴むことを始めました。
  すると、自然に自分なりの工夫や対策が浮かんできて、身近の先輩や仕様書発行先の部署に相談するようになりました。くり返すうちに、しっかり内容を把握しながらすすめているという自信を感じ始めました。(吉田圭佑 タイヤ第二設計部設計1グループ)NO.1576

 わかったつもりだったに気づく それは自分事として取り組んでいなかったからだと、組革研でわかりました。 自分が全くわかっていないのに、わかったつもりだったことに、ようやく気づいたのです。
  職場でわからないまま済ませていたのは手抜き、その根本にあるのは私の責任感の無さです。 組革研後は、不確かなままではグループに貢献できないと自分に言い聞かせて、わかっていると思っても曖昧なものはもう一度調べ直し、それでもわからなければ躊躇せずに先輩に尋ねるようにしています。
  以前、私が提出した書類の多くは不備が多く、何度も差し戻されていましたが、その数が次第に減ってきました。(山下 晋 タイヤ第二設計部設計4グループ)No.1578

 数年前のこと、巨大企業から子会社のトップに出向し、3年間にわたって総合職の新入社員十数人を組革研に送り続けたIさん、氏が親会社に戻るに際して後に託した言は、 「これを10年続ければこの会社は必ず変わる」であった。
  かつては世界一だった日本経済の国際競争力は今、20番台も後半。 これにはいくつかの要因があるであろうが、その根源には、この管理社会の中でいつの間にか、多くの日本人の 「知行」が理念・意図とは正反対に、他力本願に “初期設定” されてしまっていることがあると、私には思えてならない。
  横浜ゴムの若ものたちは、その “設定” を自分自身で再生できることを教えてくれているようだ。
  組革研は、そのための原体験の場である。
  「他力本願知行」と 「自力本願知行」の “初期設定” の実在。
  当時者本人にとっては、これこそが、たった一度の人生のその質を決してしまうであろう。 企業にとっては、これこそが、人の成長はもとより、3億円を超える生涯賃金のコスパを決してしまうであろう。

19.6.11. 

藤田英夫 

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