私が 「人間力」 の概念とその言葉を創唱したのは、今から34年まえの1982年であった。 続いて 「仕事力」 を創唱した。 これらは当時の世上で、かなり冷やかな反応に出会ったことを今でも忘れない。
その後、 「老人力」 なる言葉が出てきた。 やがて、総理大臣までが 「人間力」 を口にするようになった。 今や、内閣府には人間力戦略研究会なるものができている。 流行する 「〇〇力」 の源流になったようだ。
「誇張されたものは欠如を表す」 とフロイトは言う。 「人間力」 なる言がこの社会にこれほどに浸透してきたのは、人びとのそれが枯ればんでいるらしき実相を、多くの人たちが互いに肌で感じ始めているからではなかろうか。
私が 「人間力」 の発想にいたったのは、 「道具力」 を意識したことに端を発している。 「道具力」 の着想は、企業の中で人びとが仕事の道具と化してしまっていることを否応なく見せ付けられる日々の中から、自然発生したがごとく意識し出したものである。
「人間力」 は即ち、 「道具力」 に対する対極概念として発想されたのであった。
「道具力」 「人間力」 の定義は拙著 『人間力をフリーズさせているものの正体』 の第二、第五章に詳しい。
人は誰もが、 「人間力」 の種子を宿してこの世に生まれてくる。 しかし今のこの社会では、それを芽生えさせ、成長させ、花咲かせていける人は、少数だ。人びとをしてそうさせているものが、この社会の人びとの間に根深く染み透っている管理意識、わけても“上”の立場にある人、つまりは組織の上長、加えるに親、教師のそれである。
人間は自然の産物だ。 そこには自然の摂理が働き、人性が存在する。 したがって 「人間力」 を育むのに、故意の謀は要しない。 その自然に順応することだ。 ところが管理という作為は、そこに手を突っ込む。 自然に逆らって敵うはずはない。逆の結果をもたらす努力をやってしまうのである。
持説は、巷の定説や学説とは無縁である。 借りもの、真似ものの類は、何一つ無い。 総ては、人びとの 「人間力」 を引き出すための実践と研究の場としてあまりにも恵まれているとでも言うべき、組織革新研究会とその関連の場での、実践 → 研究 → 実践 → 研究……、という45年間にわたる反芻の中から、自分自身で発見、開発してきたものである。
人びとからは、ある場では 「人間力」 の片鱗が湧き出てくる。 それらの現象を示す諸々の場には、そこを貫いて流れている人間の本質の法則が、必ず潜んでいる。 私はそれを発見し、それに拠るマネジメントを開発してきた。
前記著は、企業人の多くの常識とは、およそ異なるものと察している。 誇大表現をすれば、地動説と天動説の類かもしれない。
( 『人間力をフリーズさせているものの正体』 序より抜粋、ごく僅かに加筆)
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