かつての日本産業においては、指向する方向がほぼ明らかになっていたと言ってよいであろう。手本の多くが欧米にあったからである。それさえ明確であれば、あとに残る大事なものは品質、コスト、納期であって、日本がこの三本柱を以って世界を制覇してきたことは、広く知られるところである。
しかし今や、この三本柱を頼りにできないことは明々白々となっている。市場創造への独創性の勝負の現下に入ってしまったのだ。まさに「人間力」の出番であるこれからだ。
独創性は、常人にその多くを期待するわけにはいかない。天才、異才に待つところ大だ。だが、元々この類の人は少ない。そのうえこの国では、学校教育においては言うに及ばず、企業において、家庭においてさえも、社会をあげてこのような才を潰してきてしまったのだ。もちろん意図せずしてである。
そこで私が考え出したのが「衆合天才」である。
1960年代の日本企業における中央研究所ブームで言われた「集合天才」をもじった着想である。「集合天才」が学校秀才の集団であるのに対して、「衆合天才」は常人の集団である。
この両者には決定的に相違するものがある。マネジメントがそれだ。その違いを一言にしてしまえば、前者が足し算的であるのに対して、後者は掛け算的であることだ。
天才と言われるお二人と私は行動を共にしたことがある。そのうちのお一人はノーベル賞受賞者だ。その人たちに共通して感じられたものの一つが、ある一点に執念を燃やしつつ、それに対する視点を、自在かつ即座に変えられることであった。
「衆合天才」はここからもヒントを得ている。人間の頭の外観はほぼ均一だが、その中身となると相当に異なる。いまや常人の視点は画一化しつつあるが、とは言えまだ人それぞれを残している。その異なるところを増幅させ、それを掛け合せることによって、事に対する発想を深掘りしていこうとするものである。
「衆合天才」でノーベル賞などとは言わない。真性天才には及ばない。だが組革研では、一夜を費やして驚くほどのレベルまで達するチームが、毎会期一、二チームは出現している。
(『人間力』第八章三より抜粋、少し加筆)
只今、サイトの更新を一時停止しております。
改めて更新を再開する予定ですので、少々お待ち下さいませ。
どうぞ宜しくお願い致します。
対談 あなたの会社はなぜ『メンタル不調』者を量産してるの
著者:藤田英夫・𠮷野 聡 発行:シンポジオン 発売:三省堂書店/創英社
脱「三逆リーダー」
藤田 英夫 (著) 発行:ダイヤモンド社 発売:ダイヤモンド社
「個全システム」によるミーティング革新
藤田 英夫 (著) 発行:ダイヤモンド社 発売:ダイヤモンド社
不感症体質に挑む「人間力」全員経営
藤田 英夫 (編) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
経営の創造
藤田 英夫 (編) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
第3の組織論
小林 茂 (著) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
人間力をフリーズさせているものの正体
藤田 英夫 (著) 発行:シンポジオン 発売:創英社/三省堂書店
人間力―そこにどう火を点けるか
藤田 英夫 (著) NTT出版
人を人として―指示待ち人間を目覚めさせるもの
藤田 英夫 (著) PHP研究所
「状況」が人を動かす―管理からリードへ
藤田 英夫 (著) 毎日新聞社
Copyright ©2018 MANAGEMENT CENTER Inc. All Right Reserved.