キャンパスリーダーの独り事

「やらせる」の二種  No.112

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 リーダーの対象は仕事と部下である。仕事に対しては今ここではさておく。
 部下に対するリーダーの使命は、仕事を「やらせる」のであって、「やっていただく」のではない。教師は学徒に、勉強をやっていただくのではなく、やらせねばならない。
 “上”の立場にある人のこの辺のところの意識が今、相当におかしくなっているようだ。「やっていただく」の横行はその一例である。
 「やらせ」なる悪いイメージを躱(かわ)したいが故の「いただく」であろう。だがその躱したいものは、「人を道具として」の管理の発想から生じるものである。その根元を省みることなく、そこから湧き出てくるもののみを躱そうと、カバーしようと、さらに言えばまやかそうとする他意が「やっていただく」となって現れているのではないのか。
 仕事はやるものである。やらねばならないものだ。そうでなければ一人ひとりの「生産生活」は無きに等しくなって、人びとは片輪の人生を送ることになってしまう。
 即ち、仕事は人びとにとって、自分のものでなければならないのだ。どうしてそれを、やっていただくにしてしまうのか。言い回しや理くつをこねているのではない。やっていただくものになったとき、総ては他人ごとに化してしまうではないか。
                          □
 「管理」も私が主唱する「リード」も共に、部下に仕事をやらせるという一点においては変わりない。だがその「やらせる」には、正反対の二種があるのである。「道具として」やらせるか「人として」やらせるかである。「道具力」でやらせるか「人間力」でやらせるかである。この二種の違いが人びとにもたらすものも、したがって正反対の二種に分かれる。
 前者のやらせるは「やらされる」となり、後者のやらせるは「やる」に反転することになる。
 「人を人として」なのになぜやらせねばならぬのか、との疑問から脱け出せない人がいるかもしれない。我われ人間が「やる」になるためには、即ち「人間力」が引き出されるためには、外からの力の作用を要するのである。
 それは「人・仕事関係」において具現化されることであり、それを生み出していくマネジメントが「リード」なのだ。
(『人間力』第七章四より抜粋、少し加筆)

15.9.29.

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