「組革研での体験は、自己の主体性を引きずり出されることの連続であった。これは、(中略)初日の集合から最終日まで一時のとぎれも無く終始一貫していた。この状況は、参加しているチームメンバー全員の言動や行動を日々一変させていき、各自が個性と創造性を全部さらけだして課題に取り組むようになっていることに気づいた。そして最後には、チーム一体となって今まで感じたことのない『人間力の覚醒』を見せつけた。」―――
先月の会期にメンバー参加した中野誠司さん(マツダ 衝突性能開発部アシスタントマネジャー)の体験記である。
組革研原体験の中枢は、人びとにフリーズされている「人間力」を目覚めさせることにある。そこのところを見事にぎゅっと摑んでおられるので紹介した。人間力の定義は拙書に詳しいが、ここでは「やる気」とでも言っておこう。
企業人の中には、文中の「主体性を引きずり出される」に違和感を覚える、それどころか反発する人さえ少なくないかもしれない。人間の現実を見ていない人たち、人間を、あるべき論の仮想現実で想い描いている自任インテリたちだ。今日ごまんといるこの種の人たち、自分自身と向き合うことはないのであろう。
我われ人間は、「楽気」と「やる気」の双方を抱えて日々を送っている。一人ひとりの内はこの双方の綱引きの連続であって、後者は前者に引きずり回されているのが現実であろう。だめ人間のことではない。それこそが正常な人間の姿なのだ。人間とはそういう生きものだと思えてならない。私もその一人だ。
人びとの前者と後者の力関係を、外からの説教・説論で変えることはまず無理である。このままでは済まされないと当人が感じたときに、初めて後者に火が点(付)くのだ。ここにこそ人と組織に対するマネジメントの中枢が存在する。
私が組革研の全リーダーに求めるものは、次の二つに尽きると言っても過言ではない。
(1)部下と眞正面から向き合って易き流れを許さない。
(2)部下がリーダーに仲間意識を感じられるように動く。
(1)と(2)は、字面からは二律背反関係に見えるかもしれない。ところがそれは、相互亢進関係にあることを現実が示しているのである。
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