「注意」は無力だった

「いいな」と思われたら押してください。

　機器破損トラブルが起きてしまったときのことです。機器の上に道具や材料を置きっぱなしにしたことが原因である可能性がありました。部下に気をつけるように注意しましたが他人事です。言われれば直し、言われなければそのままという乱雑ぶりは変わりません。そして同じトラブルが再び起きてしまったのです。
　組革研に参加したのはそんな折でした。キャンパスリーダーのお話の中で「ロボット症」のことをうかがいました。部下は自ら考えようとせず、すぐに指示を仰ぐ状態、そしてそれは上司がつくっているとのこと。まさしく、私と部下の関係そのものではありませんか。
　いくら言っても変わらない部下に不満を感じ、彼らを変えるにはどうしたらいいのかと考えあぐねていたのですが、「問題は私自身にあったのだ！」と目が覚めました。
　私は以前のように注意するのをやめ、部下全員に破損トラブルの原因と思われる場面を書き出させました。彼らは突然のことに戸惑っているようでしたが、「少しの間だけと、そのままにしてしまった」など、ポツリポツリと本音が出るようになりました。さらに互いの書いたものを読んで議論させたところ、「置き場所を一箇所に決める」、「自職場以外の人にもわかるように表示をして注意喚起する」などの案があがってきました。
　問題状況を共有するうちに部下の機器に対しての接しかたが変わり、今では同じ職場かと思うほど整然とした状態を保っています。ある時、「機器の上に物を置いたらダメだとおたくの部下に指摘された」と他職場の仲間に言われました。私は部下が自分で考えることの重要性を改めて実感しています。最近では部下のほうから改善案が上がってくるようになりました。