部下に正面から向き合う

「いいな」と思われたら押してください。

　私は、難しい案件や緊急の依頼など嫌がられそうなことを伝えるときは、直接の部下であるグループ長を介さず、メンバーに直接指示し報告もさせていました。正直言って、波風を立てたくなかったのだと思います。
　製造工程の開発を担当する私の課には会社から特許出願件数の年間目標が与えられています。私はグループ長の一人を責任者にして出願推進活動を展開させていました。しかし前年は目標未達。年が変わってもすでに暗雲が漂い、焦った私は個々の課員に直接、特許案文作成の進捗確認やアドバイスをして回っていました。
　そんなときに組革研にリーダー参加すると、メンバーに正面から向き合えず逃げようとばかりしていることを指摘され、職場でも部下から逃げていたことに気づかされたのです。
　組革研から戻ると腹をくくって朝礼に臨みました。「これまで皆さんの力を信じずにやりかたを指示するばかりでした」と全員に謝り、特許出願担当のグループ長には、「私はもう邪魔をしないから、あなたのやりかたで出願件数の目標を必ず達成してください」とみんなの前で伝えました。
　しばらくすると彼の動きが変わりました。休日相談会を設け、本社から特許部メンバーを招いて講習会を開催し、さらに退社後も居酒屋で課員たちと話し合うなど、課題達成に向けて本気で取り組むようになったのです。
　そして彼は、納期までに目標の１２５％を達成しました。この数字は過去５年間の最高値です。彼の真剣さが他の課員にも伝わったのか、その月は、特許出願件数だけでなく業務効率向上や仕損低減、改善提案件数などの目標をすべてクリアしました。
　部下たちはその力をまざまざと見せつけてくれたのです。