｢楽しくなってきた｣という声が部下から聞こえてきた

「いいな」と思われたら押してください。

　電気計測器の新製品開発にあたっては、私が考えたデザインやスペックを部下たちに示し、具体的にどう実現するかを考えさせていました。私自身はアイディアをたくさん出してワクワクしながらすすめるのですが、部下たちはどこか冷めた感じで、彼らとの温度差がいつも気になっていました。
　組革研に参加すると、リーダーからの指示がほとんどない中、自分たちで結果を出したことが達成感に繋がりました。一方、職場で部下たちが言われたことだけを黙々とすすめる姿を思い出し、私が彼らから仕事の喜びを奪っていたのかもしれないと気づきました。
　この体験以来、新製品開発では、部下たちに商品企画の大枠や方針だけを伝え、デザインやスペックなど基本的なことから考えさせるようにしました。
　ミーティングで私が発言を控えるようにすると、部下たちは次第に意見をぶつけ合うようになりました。中には｢この機能を省略して価格を抑えよう｣などと作り手目線での安直な意見も見受けられ、私はハラハラしながらも、我慢して何も言わずにいました。
　するとそのうちに、｢内部構造を見直せば？｣、｢上位、下位の２機種を出してもいいのでは？｣などとユーザーの利便性に目を向けたアイディアが出されるようになってきたのです。
　次第に｢試してみる価値はありそうだ｣という声が大きくなり、最後は全員で｢課長、試作させてください｣と私に案を示してきました。それは、私がこっそり考えていた案を上回るものでした。
　その後、いきいきと開発をすすめる部下たちからは、｢何だか楽しくなってきた｣という声も聞かれ、これまで私が彼らから奪っていたものの大きさをひしひしと感じさせられました。