部下のやる気を削いでいた

「いいな」と思われたら押してください。

　私の所属する部署は、主にお客様と直接打ち合せをしながら新商品、新技術の開発をしています。求められるものは常に世の中に無い製品で、要求される性能も大半が達成困難なものです。
　部下の中に新入社員がいます。わからないことだらけの彼は、周りからの指示を仰ぐことが日常となっていました。そんな彼に私はやりかたや問題の解決方法など事細かに指示を出していました。
　しかし、納期に間に合わせようという必死な姿はなく、課題を達成できなかったときも悔しがる様子は見られませんでした。
　そのやる気のなさは、彼が希望する分野の開発に携われなかったからだと思っていたのですが、実際は私が彼のやる気を削いでいたのだと気づいたのです。それは組革研でキャンパスリーダーから伺った「渡り鳥によかれと餌付けをして、飛ぶ力を退化させてしまった」という話のときでした。
　組革研後、彼に課題を明確に示したうえで計画の立案から実験の評価まで任せました。そして相談のときは自分の考えを書いてくるように言うと、「何でも教えてくれたのに相談にも乗ってくれないのか」と反発しましたが、理由は言わずにやらせました。
　彼が実験に失敗して困った顔をしているとついアドバイスしたくなりましたが、その気持ちを何とか抑えました。彼に考えさせるためもありますが、自分の経験が正しいわけでもないと思ったからです。
　その後、自分で立案した実験を進めるようになって、やり遂げようという姿勢が見られるようになりました。初めて自分の仮説が正しいと立証できたときにはその喜びを報告に来てくれました。
　お客様へのプレゼンでも以前のおどおどした様子はありません。