今では彼らから誘われて
――彼らは動いた（後編）――

「いいな」と思われたら押してください。

　壁にぶつかりながらも彼らを現場に誘い続けました。だが一向に動き出す気配を感じられません。自分一人で不具合個所を調べる日々が続きました。彼らをマネジメントできない自分に苛立つものの、さりとて解決策が浮かんでこないのです。
　２か月ほど通い続けました。そんなある日、一人のメンバーが現場に現れたのです。私が現場に通うようになってから少しずつ不具合の発生にこれまでとは違う変化が見られたことがわかったらしく、現場には何かがあるのかもしれないと思ったに違いありません。
　彼と一緒の現場通いが始まりました。ここはどうか、それじゃあこっちは、あれは関係ないのか。回を重ねるほどに彼は細かく見るようになり、自分なりに状態の違いに気づき始めるようになってきました。こんなことを辛抱強く続けた結果、彼の発見がきっかけになって、一つの不具合原因にたどり着いたのです。
　この頃になると、他の二人のメンバーも現場にやって来るようになりました。最初の一人から現場でどんなことをやっているのかを聞いて、やはり現場を見なくては始まらないと感じたのかもしれません。仲間が頑張って現場と取り組み、トラブルの原因を発見したというのに自分は何もしなくていいのか、そんな思いに目覚めたのかもしれません。
　今では彼らから現場に行こうと誘われるようになりました。現場で、ここが悪いんじゃないかなどと三人で言い合っています。
　熱いものが私の頬を伝わってきました。……人は動くんだ。
　現場駐在の日本人からも「近藤さんのチーム、変わってきたね」と言われて、また目頭を熱くしてしまいました。