「おっ、これでいい」と思わず口から

「いいな」と思われたら押してください。

　私は設計部門の中でも過去の類似設計が多いグループに所属しています。過去の図面を書き写せばそれで形はできてしまいます。その中で私は、より組み立てやすい、部品の少ない設計を心掛けています。ところが私の部下には、ほぼそのまま類似図面を書き写す若手がいるのです。何度指摘しても変わりません。彼をどうしたものか。
　「組革研」で、それは「部下の問題ではなく、上司の問題でしょ」とズバッと言われてしまいました。振り返ってみると、部下が困らないようにと、過去の図面を渡してさらに細かなアドバイスまでしていたのです。部下はその通りやっていただけ、私は彼を「ロボット症」につくり上げていたのです。それからは、仕事の依頼内容と納期を伝えるだけにしました。
　ところがその部下がまたしても過去の設計図面をそのまま書き写してきたのです。私は、設計し直せば経験の浅い作業員でも組み立てやすくなると思い、そう言いたいところでしたが、そこはぐっと我慢。「これでいいと思うのか」と部下に迫りました。彼は黙ったままです。納期のことが頭をよぎった私は、つい「部品構成を見直すように」と指示してしまいました。あぁまたやってしまった。こんなことの繰り返しでした。
　ある時、過去の図面の流用では済まない設計の依頼がありました。今度こそ彼にやり切らせよう、そう決意して「私は口出ししない。自分でやってくれ」と突き放します。彼は仕方なくといった様子で取り掛かりました。
　しばらくすると、図面を描き終え私に説明します。そこには試行錯誤の後が見えます。私が考えていた以上の設計、「おっ、これでいい」と思わず口から出ていました。
　「上司の問題だ」と言われた言葉がよみがえってきました。