「くそっ、また起こしてしまった」と……

「いいな」と思われたら押してください。

　3年ぶりに工場長として現場に戻ることになりました。しばらくぶりの現場を見ると、設備トラブルが多発しています。「整備グループはちゃんと修理できないのか」などの苛立ちの声が、現場のあちこちから聞こえてきます。彼らは疲労困憊の様子でした。
　ラインの係長たちは、トラブルが起こると「設備故障で生産が止まり…、とりあえず復旧させました」と報告にやってきます。ところが、再発防止策を聞いても口ごもるばかりです。
　ある時私はトラブル報告に来た係長に、問題の設備を休止しての集中保全を提案しました。すると、生産量は落とせないと返してくるのです。本当にそうなのか、楽な現状維持に逃げている、と感じました。
　意を決した私は、係長を集めた会議で「問題設備の集中保全」の断行を告げました。「難しい…」と渋る彼らに、「やると決めた。期日を決めよう」と迫ったのです。「わかりました」とだけ返事を残し、彼らは職場に戻っていきました。
　しばらくすると、現場で作業員たちと点検項目の洗い出しをしている係長の姿を見かけました。彼らは「集中設備保全計画」を作るために、頻繁に会議を行い、関係部署とも打合せをしていました。工場全体が計画に向けて動き出したのです。
　こうした中でも、設備トラブルは起き続けています。これまでであれば、他人事のような報告で済ませていた彼らでしたが、最近は違います。「くそっ、また起こしてしまった」と苦虫を噛み潰すような表情で私のところにやってきます。部下たちにこの計画をやり切らせるため、私自身、何が何でもと強い気持ちで立ち向かいます。