「こんなことを言ったらアカンと思ってた」
――「やらなくちゃ」に火が点く（後編）

「いいな」と思われたら押してください。

　これまでにない生産方式を実現するための最新設備の導入は、困っていたグループを変える絶好のチャンスだと思いました。メンバー２０人を作業工程順に３つのチームに再編し、工数や納期管理の責任を持たせ、私から細ごまとした指示はしない、グループ長にもさせないと決意したのです。
　それまで自工程の作業にしか目を向けていなかった部下たちが、後工程の状況を見ながら自工程の進捗を調整したり、後工程の作業がやり易いよう段取りしたりと、一人ひとりの動きが変わってきたのです。
　最近では、現場パトロールに出ると、グループ長ばかりか若手まで「〇〇を変えてみようと思うんですが…」などと声を掛けてきます。改善案がずっと出ずに悩んでいたことがウソのようです。若手からは、「こんなこと言ったらアカンと思ってた」と言われ、意見が出しづらい「改善活動」をやっていたことにも気付かされました。
　グループ長からの指示に対して状況報告するだけだった朝会にも変化が起きました。「〇〇の治具を変えればどうか」「〇〇の回収方法をこうしたい」といった改善案が出され、「〇〇で一秒縮まったぞ」などの報告もされるようになったのです。そこには、自信を持って取り組んでいる姿がありました。
　３か月で達成を目指した生産性アップの目標を、２か月半で達成してしまいました。それでも、まだまだできる、と彼らは意気込みます。
　今までの私ならば、高額な最新設備の導入に早く資金回収しなければと、指示を出しまくっていたことでしょう。もし、そんなことをしていたら目標達成は危うく、更に数値を上げるなんて無理だったと思います。
　彼らの「やらなくちゃ」に火を点けることが私の使命、元の自分に戻らないよう気を引き締めていきます。