新たな技術の実現に向け、一歩を彼が踏み出した

「いいな」と思われたら押してください。

　 辛抱強くかつ等しく部下に向き合おうとしても、その力の現われかたにはばらつきがありました。 たとえば社内で表彰された女性の二年後輩の新人は、 「対象がどうできているか」を理解しようとしないですぐ対応に走ろうとします。 自分が認知していない、あるいはできない事実を掴むことに躊躇います。 自分が 「対象」をわかっていないことを認めたくないようです。
　 そういう時はあれこれ細かくやりかたを教え、マネジメントした気になっていたのが組革研まえの私でした。 しかし彼にはテーマと達成目標を伝え、事実としてこれまでの開発してきたエビデンスを渡して、関わる人びとを紹介しただけで終わらせました。 その結果、彼はパニックに陥りました。 どうしていいのか途方に暮れました。
　 それでも、こうしたら良いとか私は一切言いません。 示せる事実をひたすら提供するだけ。 配属からずっと、このようなやり取りを続けました。
　 彼は 「どうしていいかわからない」と逆切れしました。 私は 「じゃぁ、これは他に誰がやればいいか推奨できる人はいるか？ 私は君にしかできないと考えている」と言うだけです。 もぉ、涙なのか鼻水なのかわからないものまで垂れ流して、 「できません！」と訴えてきます。 それでも私はグッとこらえて、 「できないと理論的に証明されたのか？ 違うだろ？ だったら、目標達成の道筋はあるはずなんだ」と言います。
　 半年くらい経った頃から、 「中本さんちょっといいですか？」と言って、彼が目標達成までのシナリオを私に提案してくるようになりました。 まだまだ不十分な点はありますが、誰も成し遂げたことのない新たな技術の実現に向けて、その小さな一歩を、彼自身が踏み出せたと確信しました。 （終）

　　昨日と本日の2日間、マツダ・中本尊元さんの職場での取組みをご紹介しました。