「仕事力」が５倍にアップ

「いいな」と思われたら押してください。

　 現地の人たちという 「対象」の存在に気づき、Ａ君が腹を括りました。
　 自分から一方的に指示を出すことを止め、 「対象」である現地のスタッフととことん向き合っていく、彼らと腹を割って話し合って、同じ仲間として改善していこうと決意したのです。
　 その後彼は、片言の英語を駆使しながら必死に現地スタッフと意思疎通を図るようにしました。 相手をわかろうと本気になったら、拙い英語でも十分に通じ合えました。
　 しかし、完璧な製品はなかなか上がってきません。 ついに彼はある決断をしました。 「結果が出るまで日本には帰らない、現地の人たちと最後までやりきる！」。
　 指示待ちの典型にしか見えなかった彼からの決意です。 その願いを聞かされた時、人はここまで変われるのかとびっくりさせられたと同時に、嬉しさが込み上げてきました。 私の返事は、 「お前がこれでよしと思うまで、とことんやってこい」でした。
　 その後、製品は順調に仕上がっていきました。 さらに納期が遅れたことで生じた費用の問題も、彼が自ら現地の担当者と交渉して、ほぼ解決までこぎ着くことができました。 彼の覚醒です。
　 その報告を受けた私は、改めて 「任せる」ことの重要性を教えられました。 そして、困れば人は動くというのは真理だと確信できました。
　 ベトナムから戻ったＡ君は別人のようです。 顔つきも目つきも以前とは比べようもない。「仕事力」ということで言えば、以前の３倍から５倍になったと評価しています」。（終）

　 昨年11月29日にダイヤモンドオンラインに掲載された三井Ｅ＆Ｓマシナリー・辻省悟氏の取組みに加筆修正し、４日にわたってご紹介いたしました。