５日間で彼なりの修羅場を経験したはず

「いいな」と思われたら押してください。

　 突然、海外の製造トラブルを解決してこいと言いましたが、まだ２年目で経験も実績も皆無のＡ君にとっては、正直言って無茶ぶりです。 勘弁してくださいという雰囲気も漂っていました。
　 しかも彼は英語が苦手でした。 どうやって先方とコミュニケーションを取ればいいのかから始まるのです。 不安も相当なものだったと思います。
　 そんな状況を知りながら、私はとくに具体的な指示やアドバイスもしませんでした。 言ったのはひと言、 「とりあえず現地に行って、何とかしてこい」だけでした。
　 そう考えたのには理由があります。 困れば人は自ら動く。 動かざるを得なくなる。 組革研で叩き込まれた考えかたです。 リーダーである私の役目は、部下をいかにそうした状況に置くかだと思いました。 もちろん、いろいろ細かく指示したほうが自分にとっては楽だし、口を出したい気持ちは山々でしたが、ぐっと堪えました。
　 彼ならできるという自信は何一つありませんでした。 そもそもそんなことを判断できる材料がない。 彼は何の実績も経験もない２年目。 しかし、ちゃんとした結果を出してもらわなければいけない。 本当に悩みました。 そしてその結果、彼に任せました。
　 ただ、不思議と不安は感じませんでした。 その理由は、ベトナム出張を決めたひと月まえ、彼を組革研に派遣したからです。 あの５日間で彼なりの修羅場を経験したはずです。それがあったから、彼を選び、任せられたのだと思っています。
　 数日後、Ａ君は一人ベトナムの地に降り立ちました。（続く）

　 昨年11月29日にダイヤモンドオンラインに掲載された三井Ｅ＆Ｓマシナリー・辻省悟氏の取組みを加筆修正し、４日にわたってご紹介しています。今日はその２日目です。