参加リポート/現場から

絶対に精度を落とさないと、より大変な作業を部下が選んだ

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藤田理人 三井造船 千葉技術開発センター 主任研究員 〔第490回/2015年10月会期参加〕  NO.775

fujitaHP
 職場では二人の部下とともに数値流体について研究をすすめていますが、彼らは毎日、1時間ほど残業しただけで帰ってしまうのです。「あと少し頑張れば結果が出るかもしれないのに」と常々不満に思い、彼らには意欲がないと決めつけていました。
 しかし組革研で、「あれは夢だったのかしら…」とソニー厚木工場当時をふり返る「トイレ掃除のおばさん」のお話を聞いた瞬間、衝撃が走り、涙が流れました。同時に部下が楽しくないのは私の責任だったと気づいたのです。今まで何から何まで細かく伝え、まるで自分の代理人のように仕事をさせていました。地道で面倒な作業だけを彼らが行い、出てきた結果を見て満足するのは私でした。しばらく泣き止むことができませんでした。
 組革研後、ちょうど部下の一人の解析案件が始まるところでした。さっそく私はスケジュールの作成や関係部署との連絡を彼に全て任せることにしました。すると彼はすぐに週単位の業務工程を作ってきました。その中には自分のやるべきことだけではなく、関わる他の人たちの流れや決定すべき事柄までしっかりおさえられたものでした。
 その結果、中間報告には最低限のアウトプットに漕ぎ着けましたが、工程どおりではありませんでした。流体解析の計算が不安定になり、満足する精度が得られなかったのです。
 もう一度、最終報告で研究結果を発表することになりました。彼は再び取り組みはじめる際に、絶対に計算精度を落とさないと決意し、より大変な作業のやりかたを敢えて選んだのです。
 最終報告の日が近づいています。彼の解析はすでに終了し、報告書も間もなく完成する予定です。発表を終えた後の彼の表情が今から楽しみです。

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