彼らの思いを抑え込んでいるのは私自身だった

「いいな」と思われたら押してください。

　技術レベル向上のため、１年間現職を離れて研究する人材育成プログラムである「技術アカデミー」で、私は安全部門を担当しています。
　９月に「リーダー参加」した組革研では、メンバーを迷わせずにすすめさせることばかりを考えていました。ところが、いつからか彼らが私の表情を気にし、様子を見てから動くようになっているように感じたのです。チーム内の議論も途絶えがちになっていました。
　その時、「指示を止めろ」「様子を見るなら２歩下がれ」とブロックリーダーから言われてハッとしました。鉄道輸送では安全が最も大切です。「確固たる命令系統と的確な指示が安全を守る」ことは必要ですが、頑なで相手を顧みない私の指示が、考えようとするメンバーの邪魔をしていたのです。
　指示を止め、メンバーの様子を遠くから見ていました。すると、次第に彼らの目の色は変わり、議論も深まっていきます。まさしく「個」が輝きはじめたように見えました。そしてこれまで指示を出す行為に酔い、自己満足に浸っていた自分自身に気づかされ、本当に恥ずかしく思いました。
　最近の技術アカデミーでは、研究生たちは提出物の期限を守り、体裁を整えてはいるものの、彼らの意見や思いが入らず模範解答のような内容になっている状態を不思議に思い、悩んでいました。しかし希望を胸に抱いて集まってきている彼らなのです。その熱い思いを抑え込んでしまっているのは私自身だったと、「リーダー参加」で教えられました。
　技術アカデミーの期間は残り半年。彼らが支社に戻り、若き安全の伝承者として現場の人たちの心に響くような安全施策を展開できるかは、私が自らの管理体質と向き合い、人として彼らとぶつかっていくことにかかっています。少し出遅れてはしまいましたが、まず第一歩を踏み出します。