夢の実現へのマネジメント

「いいな」と思われたら押してください。

　生産に向け、数週間後には工場が動きはじめるという時点で製品の性能問題が見つかると、わが研究・開発部門へも「直接現場で解決に当たれ」と他部署や上長から檄が飛ばされます。数年まえまでは私も担当者を差し置いて、実験や解析、関連部門との調整を行ってきました。私の動きを見て、今後どう行動すればよいかは後輩たちが考えてくれるだろうと期待し、彼らが立ち止まっていると一つずつ指示していました。長い間、率先垂範こそが最も大事なことだと思っていたのです。
　確かに上長のうしろ姿を見て後輩が育つことはあります。しかし、それは十人のうち一人ぐらいだということも経験していました。自分が動き回って問題が解決したという自己満足、自分の指示で人が動く優越感を感じているに過ぎないのではと、疑問を抱くことが多くなっていました。「我われ人類は深く考えることにより進化を遂げてきたが、私は考えさせないようにして進化を阻んでいるのではないか」と考えるようになっていました。
　試行錯誤をくり返していた私に、組革研の体験は、自らの行うべきマネジメントのありかたを明確に示してくれるものでした。
　私は今、幹部社員や担当などの役職や職制を問わず、部門内の全ての人たちにこう問いかけています。「技術者として最高のものを作りたいと思わないのか。そう思う志と行動が伴なえば、その技術にお客様は必ず共感してくださる。その結果が収益に繋がれば言うことないじゃないか」。
　部員全体が大きな夢を持ちそれに向かっていけば、今よりも何倍も何十倍もよい製品ができ、何倍も何十倍も優秀な技術者が育つに違いない。私のマネジメントはその実現に向けたリードで、人や心の管理ではないと思いを新たにしてすすめていくつもりです。