部下を「対象」に向き合わせる

「いいな」と思われたら押してください。

　部下の一人に任せたゴム材料の開発が、製品に搭載される段階に差し掛かっていました。
　組革研で味わった発見の感動。そのことを何とか部下にもと考え、彼らの目を「対象」に向かわせることが私の役割だと思うようになりました。
　開発品のゴムの継ぎ目が開いてしまうというトラブルが発生しました。現場の工場から報告を受けた彼は「切り口の粘着性が従来品と比べると低いので、粘着剤を増量する」と言い始めました。
　「それは本当？」と尋ねると「測定はしていませんが、たぶんそんなところでしょう」。別の質問を投げかけると「そういう報告はあがってきていません」「わかりません」と返ってきました。
　彼はトラブルの結果だけしか見ていませんでした。
　現物は４００キロメートル離れた工場にあります。本当にそれでいいのかと問いかけるうちに、自ら出張申請をしてきました。
　現場で粘着性を測定した彼から、自分が想定していた原因だけではないことがわかったと報告がありました。
　これまで工場からの報告はメールや電話が中心でした。時には現場の写真を送ってもらうこともありましたが、現場に行って現物を見て、彼は何かを感じたようです。
　開発品と従来品を比較し、その違いから仮説を立て始めました。現場へ何度も向かうようになり、粘着性以外にも重要な要因を一つ見つけました。
　いくつか対策をとってトラブルは収束に至りましたが、原因についてまだわかっていない部分もあります。真因を掴もうと、まさに今も現物と向き合っているところです。彼はきっと見つけると信じています。