『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。( I’m Sorry I Broke Your Company)』という書名に釣られてこの本を読んでみた。ごくごくの斜め読み。著者は、カレン・フェランという企業経験30年の女性コンサルタントである。
この種の学者やコンサルタントとは違って、この著者は大事なことに気付いたらしく、それを力説しようとしている。と言ってもその要点は下記に尽きるようだが。
「この20年で企業経営の手法は、急激に増え、『効率化』や『スキルの標準化』、『パフォーマンスの最適化』などの目標のもとに企業のベストプラクティスとして定着した。(中略)このようなモデルや理論はいずれも職場から人間性を奪うものであり、(中略)従業員は使い捨ての機械よろしく最大限まで酷使され、一人ひとりの個性も才能も埋もれたまま終わってしまう。」
「ビジネスとはすなわち『人』なのだ。(中略)人間が理屈どおりに動くはずがない。(中略)これ以上、職場から人間性を奪うのはやめるべきだ。そして人材のマネジメントさえできれば、あとはすべてうまくいったも同然」
それまでの自分自身の知行をばっさりのこの自己批判の結末は、私の考えに近いという人がいる。たしかにちょっと見ではそうかもしれぬが、重要なところで異なる。それは以下のことだ。
モデルや手法、理論が人びとの人間性を奪うのではない。それらの中には大事なものが多々ある。だがそれら「知識」は”道具”にすぎないのであって、道具の働きは使い手によって左右されるということである。
経営の”主”はどこまでも人間だ。事はこの主従の関係が逆転してしまって、人間が「知識」に負んぶに抱っこという、知識階級による知識信奉によって、人間の存在を弱体化させてしまっているところにあるのだ。
もう一つ追記しておく。それは、「人材のマネジメントさえできれば、あとは……」と言っているが、そのマネジメントの中味は小学生レベルに終わっていることだ。
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