キャンパスリーダーの独り事

知識の抗体化と固守化  No.39

CL320no.39.jpg 知識はより知識を生み出すための道具だ。だがそれは諸刃の剣となって人間に作用する。正の作用については語るに及ばず。負の作用には二つのパターンがあって、それぞれを私は「知識抗体化」作用「知識固守化」作用と呼んでいる。
 前者は、あたかも予防接種のごときであって、人びとの頭に入った知識という”抗原”が、わかったとなって間もなく”抗体”と化し、その後により入ってくるであろう知識に対して免疫の作用をしてしまうらしいことである。もっとわかる、あるいは発見に連なる機会に遭遇しても、それを捉えるどころか、頭に詰まっている知識に囚われ、阻まれて、新しい事実を受け容れないか、たとえ受け容れてもそれを活性化させないように作用してしまうらしいことだ。
 後者は、あたかも既得権や財物のごときであって、自分の頭に入っている知識が侵されることを恐れ、汲々としてそれを守ろうとするらしいことである。
 地動説のガリレオ=ガリレイの辛苦の起こりも、この二つによるものだったのではなかろうか。世に蔓延る自任知識人、この二つの塊りみたいなものだ。その連中が「改革」をよく口にするのだから笑止の至りだ。
 さて先日、なんとも晴ればれとしたうれしいニュースに目を醒ました。「STAP細胞」に至る大発見である。「世界を驚かす画期的な成果」などの見出しが新聞を賑わし、iPS細胞を研究する本多新さん(宮崎大学准教授)は「驚きを通り越してあきれてしまうくらいのすごい成果だ」と称えている。
 発見者の小保方晴子さん(理化学研究所発生・再生科学総合研究センター・ユニットリーダー)はまだ30歳の若ものだ。「最初は誰も信じてくれず、やめてやると何度も思い、泣き明かした夜も数知れない」そうではないか。「複数の一流科学誌に論文を投稿したが、『信じられない』と却下され続けた」そうではないか。『ネイチャー』といえば技術系の人ならば知らぬ人はいないであろう超一流とされている英国の科学誌、そこからは「あなたは何百年にもわたる細胞生物学の歴史を愚弄している」との論文審査レフェリーのコメントが付されて突き返されてきたそうではないか。
 これまた、この二つの作用とは無縁ではないようだ。

14.2.10.

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