消費者主権が叫ばれ始めてから５０年も経っただろうか。かつてその波に乗って「消費者は王様」なるキャッチフレーズも現れた。創唱したのは、当時の世界最大の百貨店・シアーズローバックであったと記憶する。以来、マーケティングを論ずる際の必携のうたい文句となってきた。
　今夕、テレビを見ていたらこんな場面が出てきた。日本一の老舗百貨店でのことである。雨が降ってくると、店内にある音楽を流すのだそうだ。客にはわかることなく店員にのみ知らせるためだという。
　その理由に恐れ入ってしまった。「（お客さんが）雨を気にせず、気持ち良く買い物をしていただきたいから」だと胸を張るのである。本音は「客が急ぎ帰ってしまっては困るから」ではないかぐらいは、子どもでもわかることではないか。”王様”には個々それぞれに都合がある。一刻も早く知らせるのが消費者主権ではないのか。
　こんな見え見えの大義名分が対象の心に届くと思い込んでいるらしい。不信感を生み出すだけではないか。この国切っての百貨店にしてこれだ。
　彼方此方で、おそらく無意識のうちにであろう、ＣＳ(顧客満足)がＳＳ(自分満足)に変わり果てていると思えてならない。