キャンパスリーダーの独り事

「悟りとは
 平気で死ぬことではなく
 平気で生きることである」
 ――私の「座右の銘」・2  No.224

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  上の見出し語は、私の長い間の文字どおりの「座右の銘」である。正岡子規のものだ。自分の書付けをここに移したものなので、表現形式が原文どおりかどうかは定かではないが、その内容は子規の著「病床六尺」に以下のように書かれていることから明らかである。

 余は今まで禅宗のいわゆる悟りという事を誤解していた。悟りという事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思っていたのは間違いで、悟りという事は如何なる場合にも平気で生きる事であった。

 「平気」とは、「物に動じないこと」と『広辞苑』にはある。そうすると、この言葉は相反する二つの状態を表すことになる。一つは、人生観とでも言えばよいか、前回のこのコラム(no.223)に記した私の自作の座右の銘・1「いいこと・いやなこと」は紙の「表・裏」に通じる平気。もう一つは、悪事、無責任でありながらけろっとしている連中の、今では至る所で目に付くあの平気である。ここで言うところの 「平気」はもちろん前者を指している。

 「いいこと・いやなこと」は紙の「表・裏」とは、表だけの紙も裏だけの紙も無い、即、苦しんだり悩んだり困ったりという嫌なこと無くして自己実現などという好いことは無い、ということである。これについては私は、50パーセントぐらいは身に付けていると思っている。だが「平気で生きること」については、我ながら何とも心許ない。20パーセントというところであろうか。なかなか「平気」になれない。
 となると私は、ここに決定的な自家撞着を抱えることになってくる。この二つの私の「銘」には、人生観の因果関係のようなものが潜んでいると思うからである。この自己矛盾の深掘りについてはやや理くつっぽくなるのでここでは略し、これからの自分の思索課題としていく。

 「平気」で生きることなどできるのか、この時世にそういう人が居るのか、という疑問が生じてくることがある。そんな時に思い浮かべるお一人が、昨年亡くなった女優の樹木希林さんだ。破天荒な生き様を見せながら彼女の後を追うかのように先日亡くなった内田裕也さんと数十年間にわたって連れ添った?お人である。
 二つのニュースソースから彼女の人となりの断片を紹介したい。二つのテレビ番組から、もう一つ私が懇意にし、希林さんもよく通っていたらしい料理屋の主の話しから。

○ 全身がんに侵されていた。
○ 「ありがたいよねぇ、死ぬってわかっているからこんなに準備ができて」
○ 何ごとも面白がる人だった。
  病までも面白がっていた。(娘の也哉子さんの言)
○ 「がんになったのは、今までやってきた自分の暮しぶりの一つの答」
○ 「驕らず、人と比べず、面白がって、平気で生きればいい」(也哉子さんに対して)
○ 悲壮感を漂う発言をしたことがない。
○ メイクは(いつも)していなかった。
○ どんなことでも自分に原因があるようにしようとしていた。
  それが母の精神の強さの源。(也哉子さん)
○ 恥ずかしいことこそ人前にさらけ出すという、厄介な性分だった。(也哉子さん)

 ついでに、このコラムの主旨からは外れるが、希林さんの人となりをイメージするための一端を紹介しておきたい。

○ 「私たちには生きる意味がある」
○ 鋭いナイフのような母だった。(也哉子さん)
○ 「どっかで見たような芝居をしちゃいけない」
  「誰でもやるような芝居をしちゃいけない」
○ 「(セリフを略して)背中で語る」
○ 他人思いで気遣いの人
○ 「映画(の制作)はねぇ、事件があったほうが楽」

 以下は、也哉子さんが語る亡くなる直前の希林さんの姿。

○ 9月1日がきて、病室で窓の外に向かって、「死なないでね、どうか、お願いだから」と何かに唱えるように必死に繰り返していた。その姿を見て、「何なの、どうしたの?」と言ったら、「今日は全国の子どもたちが一番自殺してしまう日なんだよ」と。涙を流しながら。自分がまさに死と闘っている病床で……。

 (「 」内はご本人の言。その他は也哉子さんをはじめとする周囲の人たちの言。)

 私の人生の卒業は、そろそろ射程距離に入ってきたと思わざるをえない。それまでにどれほどわが「座右の銘」を我がものにすることができるだろうか。

  ※ 『樹木希林さん特別番組』 テレビ朝日。19.9.10.
    『是枝裕和×運命の女優たち』 NHKBSスペシャル。19.11.10.

19.11.12. 

藤 田 英 夫 

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