キャンパスリーダーの独り事

再/リーダーの “引き算” そして “足し算”  No.220

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  「人間力」と共に 「仕事力」と表現する概念を創唱したのは、37年まえの1982年であった。 記すまでもなく、 「人間力」とは人間を特徴づける力、 「仕事力」とは価値付加・生産性向上力を指している。 詳説は拙著※1にゆずる。
  このコラムの今回は又々、人びとの 「仕事力」upをめぐって申してみたい。 なにしろ、かつては世界で1、2を競っていた日本企業の労働生産性は今、25位前後にまで落ちてしまっているのだから。
  人びとの 「仕事力」を支配する決定的な鍵は、組織の 「リーダー」にあると私は確信する。

  まずは、そのリーダーの “引き算” が何よりも大事だ。
  リーダーが 「3逆」に嵌まり込んで、部下の 「仕事力」をごっそりdownさせてしまっているからである。 「3逆」とは※2まず以って、 A「部下に嫌われない努力」、B「教える、指示する、世話をやく」、C「部下の心を“操作”しようとする」を指している。 多くのリーダーが、それらは逆どころか、それこそがマネジメントだ、と心底から思い込んでいるらしいのだ。 企業内は、 「3逆リーダー」の連鎖組織になっていると言わざるをえない。
  私が 「脱・3逆」を声を大にして提唱したのは、 「組革研」第500回会期を記念する 「定期報告会」においてであった。 その後、職場で 「脱・3逆」を展開されているリーダーの人たちによる実績を拙著※2で詳しく紹介した。 実績とは記すまでもなく、部下たちの 「仕事力」upを指している。
  それによれば、 「3逆」の中の主にBを減じただけでも、部下の 「仕事力」は1.5倍~2倍になっている。 詳しくは事務局に問い合わせるか拙著を読んでほしい。 さらに今、その後の様子を調査するところである。
  と言って、 「教・指・世」をゼロにすべきだと言っているのではない。 それどころか、必要ならば大いにやらねばならない。
  「必要」の条件は二つだ。 一つは、部下がその 「ニーズ」に迫られていること。 ニーズのないところに何をやっても、けっきょくそれは無駄に終わってしまうことは、企業人ならば百も承知のところであろう。 もう一つは、どうしてもそうせねば相手が動けない場合である。
  この二条件のいずれか無くして 「教・指・世」をいくらやっても、けっきょくは儘ならない。 その結果はと言えば、部下のやるべきことを肩代わりしているリーダーがいるではないか。

  その上で大事になってくるのが、リーダーの “足し算” である。
  “引き算” のみに終わった場合、人びとの 「仕事力」の動態に関しては3つのケースが予期できる。
  ①数週間のうちupする。
  ②一時的にdownするが、数週間から数か月のうちにupする。
  ③upどころかdownしたまま。
  ①②に属するのは、並みかそれ以上の体質を有する企業であって、 「組革研」に集う企業の多くはここに属するようだ。 ③のケースについては、これからの調査で明らかにできることと思う。
  いずれにせよ、 “引き算” を追いかけて大事になってくるのが、 “足し算” である。 “引き算” のみによる 「仕事力」upを期待するのは、一般論としてはきわめてリスキーだ。
  “足し算” とは、 「3逆」とは相反する外力、これこそが前記の部下の 「ニーズ」を呼び起こすことを指している。
  私が事あるごとに首唱していることだが、人間はみんな、矛盾する二つの 「気」を合わせ持って日々を送っている。 「やる気」と 「やらないで済ませる気」だ。 この二つの 「気」が、己の中で “綱引き” をやっている。 そしてこの勝者は、後者の場合が少なくない。 それではダメだとはわかっていながら、ついついにだ。 それはダメ人間の風体ではなく、人間に普遍する自然の姿であろう。 私も間違いなくその一人だ。 前者が常勝する人がいたら、それこそ化けものかと思いたくなるほどだ。
  とは言え、そのままであっては、仕事はおぼつかないし、人生も台無しになってしまう。 どうするか。 そこであまりにも大事になってくるものが、外からの力の作用、 「やらないで済ます気」が許されなくなるような 「外力」の存在である。 これをずばり換言すれば、イコール 「やる気を『応援』する力」ということになる。
  この 「力」の源泉は二つだ。 一つは 「リーダー」の存在であり、一つは困ることだらけの生々しい 「状況」の存在である。
  前者について。 拙著のいずれにも詳述しているのでここでは略すが、一つだけ補説しておく。
  「横から目線」の組織化である。 一人の人間に作用する組織パワーには3方向からのものがある。 モデル化して言えば、 “上” から横から “下” からである。 斜めは略す。 この 「横からの力」の活用だ。
  3方向からの力で最も強いのは、実は “下” からの力、その反対が “上” からの力である。 現実は “上” からの力によって “下” は動いているので、それはなぜかということになろう。 “上” からの力には、 “上” の意識がいかにあっても、それには 「権力」が付いて回っているからだ。 権力によっては、人は動くがその心は動かない。 逆の場合さえある。 “下” からの力には権力の作用はないが、マネジメントにおける実用性もない。
  そこで 「横からの力」というわけだ。 昨今のパワハラ騒ぎに振り回されないためにも、きわめて有効であろう。 具体的なすすめかたについては拙著※3、4に “いも洗い” と題して詳しい。
  後者について。 私の最初の著作は 『「状況」が人を動かす』※3であった。 この著はベストセラーにもなったし、ロングセラーでもあったのだが、30年まえのものなので今は絶版、そこで、その要点のみをごく手短かに記しておく。
  困った 「状況」の下では指示されずとも人びとが主体的に動いてしまうことは、誰もが目の当たりにするところであろう。 人間は 「自分が困れば必ず動く」。 じっとしているわけにはいかなくなるからだ。
  この点では幸いにというべきか、都合よくというべきか、企業の中は困ることだらけ、問題だらけであろう。 だとすると、人びとの 「やらないで済ます気」が勝ってはいられないはずだ。 にもかかわらず人びとは、やらないで済ませようとする。 どうしてか。
  組織の中が “化粧” されてしまっているからだ。 だめ組織ほど厚化粧になっている。 いいところは目立つようになっており、まずいところは隠されている。 意図的にではなく、無意識のうちにいつの間にかである。
  そこで、 “化粧はがし” が不可欠、大事になってくるのである。
  そのやり方についてはこれまた拙著※4にゆずらざるをえないが、ここに、大事な2ポイントのみを記しておく。
  一つは、困ることだらけの 「状況」の、説明ではだめ、いわんや説教などでは全くもってだめだということ。 生々しいことが大事なのだ。 できるかぎり、現物・現地に近づけることだ。 もう一つは、その作業を、一部の人ではなく、できるかぎりみんなを動員してやらせることである。

  ※1 『人間力をフリーズさせているものの正体』2015年4月21日 シンポジオン刊
  ※2 『脱「三逆リーダー」』2018年7月4日 ダイヤモンド社刊
  ※3 『「状況」が人を動かす』1989年4月17日 毎日新聞社刊
  〃 『人を人として』1998年11月3日 PHP研究所刊
  ※4 『人を人として』1998年11月3日 PHP研究所刊
  〃 『「個全システム」 によるミーティング革新』2018年7月4日 ダイヤモンド社刊

19.5.15. 

藤田英夫 

脱・「三逆リーダー」
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