キャンパスリーダーの独り事

「『考えないこと』を教えている」  No.210

  子どもは誰でも哲学的な問いを持ちますが、それを忘れさせられるのです。
  私たちは子どもに、読み書きと数の数えかたを教えます。 それと同時に 「考えないこと」も教えているのです。
  なぜ私たちは、文字が読めるのに哲学的には考えないことになってしまうのでしょうか。
  答は簡単です。私たちは過ちを犯しています。

 これを見た組革研にご縁のある方がたや私の本の読者は、また繰り言を(私が)書いていると思われるに違いありません。 ですが私の言ではないのです。 今世界で注視されているマルクス・ガブリエルさん(ドイツの哲学者・ボン大学教授)の、彼が来日して東京大学や朝日新聞社などで講演したときの発言※1です。
 この定見は、60年も前から、私が訴え続けていることと寸分も違いません。異なるところは、彼は世界レベルで有名私は無名の一点のみです。
 教育者もとより、企業人言うに及ばず、学者、政治家、評論家、さらに巷の人たちの99パーセントにとって、こんな見解は狂気の沙汰、言下に一蹴されてしまうことでしょう。

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  「教育=教える、説明する」が超常識になっています。 「マネジメント=教える、説明する、指示する、世話をやく」が超常道になっています。 先日の組革研「定期報告会」でも、脱「三逆リーダー」をアピールする私に、「教えない、指示しない、世話をやかない(中略)とは、(中略)何もしないわけではないのでは?」 「そうは言っても教える、指示しないと短期的には成果が上がらないのでは?」等の質問が出されました。
  それが人びとの 「人間力」をフリーズさせていることを知る由もなくでしょう。「知識」は、それが本人のものにならなければ何の価値もないどころか、害悪にもなっていることに無頓着に見えます。莫大な時間とお金を費やして、オール日本を挙げてです。

  与え側のニーズによって受け側に知識を詰め込む、それも多くの場合むりやりに、このことこそが、肝心要の知識を 「本人のものに極めてさせにくくしている」ことを訴えたいのです。
  観念論で申しているのではありません。 組革研の歴史はもとより、付設するチームワーク学校(子どもたちのための組革研)、さては、信州大学附属長野小学校での実態※2がそれを示しています。

  人間は知識の容器ではありません。 「考える葦」※3です。 与え側がどこまでも先回りして知識を詰め込むのは、「読み書きそろばん」まででよいのではないでしょうか。 アインシュタインが語るところの 「大切なのは、疑問を持ち続けること」 「物理学の最初の授業は実験ができて、見て面白いことだけにすべきです……若い精神を、数式などに決して近づけないことが特に大切」※4です。
  だからと言って、今日の社会では、人びとを野放しにしておいたら、もっとだめです。 それはとんでもないことです。 「教育」は最重要事です。

  万事の先にあるものは 「ニーズ」です。 少なくとも企業人ならば、ニーズのないところにどんなに力を注いでも、それは不毛に終わることは誰もが承知していることではないでしょうか。
  教育の根本は何をさておき、その対象、即ち受け手の 「ニーズづくり」、即ち本人に求めさせること、そのために 「わからないこと」を増殖させ続けることです。 その発想と仕組みづくりこそが、教育の最大課題であると考えます。
  企業の中でそれを具現化するのは、けっして難しいことではないと確信します。 そのスタートラインとなるのが脱「三逆リーダー」です。
  ※1 マルクス・ガブリエル「欲望の時代の哲学」BS1(18.7.15.)
  ※2 小松恒夫著『教科書を子どもが創る小学校』(1982年)新潮社
  ※3 フランスの思想家パスカル(1623~1662年)の『パンセ』(1670年刊)より
  ※4 金子務著『アインシュタイン劇場』(1996年)青土社

18.9.3.

脱・「三逆リーダー」
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