問題のない人生なんてない。 いわんや問題のない企業なんてあろうはずがない。 生きているということも仕事をしているということも、その反面では問題を起こし続けているということだからである。
しかしそれが、顕在しているか潜在しているかの違いはある。 それが、見えやすくなっている組織集団と見えにくくなっている組織集団とがあるということだ。
人間は誰でも、自分にかかわって問題を見たり聞いたり抱えるのはいやだ。 避けたい。 したがって、見たくないものや見ないで済むものは、たとえ視界に入っていても無意識のうちに見ないようにする。 聞きたくないもの聞かないで済むものについても同様。 自ずとそうなるように人間はできているようだ。
それを助長しているものが、問題を起こさないことを是とする文化である。 老化した組織集団語るに及ばず、成熟した組織集団は多かれ少なかれこの文化を持っている。
このような文化の中では、いつの間にか人びとは、状況に対して〝盲目〞になっていく。 誰もがいつの間にか〝噓つき〞になっていく。 噓つきとは、問題だと思われる部分を当たり障りのないように加工して他に伝えようと努めるから、結果として問題を隠したか偽ったかになってしまう、ということである。
上への報告、下からの報告の中身はどうであろう。 たぶん、まずいと思われることは少なく、うまいと思われることのほうが多いのではなかろうか。 いくらかでも挑戦的に仕事をやっているのなら、現実はままならぬことのほうが多いであろうに。
問題は厳然として存在しているのに、まずいと思われることには蓋がされ、都合のいいことだけが目立つように、実態が〝厚化粧〞されてしまったのでは、人びとは、贋の状況の中で仕事をしているということになる。
このような文化の中では、人びとは、状況をまともに認識することができないので、したがって状況との相互作用は断たれてしまうことになる。
「人を道具として」の人間観による 「人・仕事関係」の場では、そのような文化のほうが都合がよかったのだ。 期待され、そのように〝設計〞された道具力を出させきるのには、問題だらけの状況は、道具力の所有者が人間であるということを考えると、むしろ妨げとして作用しかねないからだ。 つまり、道具力発揮の障害となるようなものは取り除かれ、それ向きに整然となるように化粧されて人びとに与えられてきたのである。 ロボットに対するそれと同じように。
(『状況が人を動かす』第五章より抜粋、少し加筆)
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