キャンパスリーダーの独り事

「個全システム」の使いかた
 ――横から目線の組織化・11  No.185

185CL.jpg  「横から目線の組織化」はマネジメント、即ち人と組織の力を引出し、増幅させていくための、きわめて有効かつ実際的な発想法である。 その 「概念」と手法の中軸となる 「個全システム」について、10週にわたって連載してきた。
  「個全システム」の過程の半分は話し合いだが、一般に行われているミーティングと 「個全システム」のそれでは全く異なる。 米国流の 「ディベート」、いま流行の 「〇〇大学白熱教室」などと比べても、討論の奥行への導入において 「個全システム」ははるかに勝ると、私は思っている。 まさに口角泡を飛ばすことになる。
  とはいえ、日常的な全てのミーティングをこのシステムで行うのは実際的ではない。 ここ一番という大事な会議やミーティングのためのものである。

  くり返しになるが、 「個全システム」の仕組みを図解しておく。 ミーティングメンバーを10人と仮定しての一例。

– – 分離 – –
(Aグループ4人/Bグループ3人/Cグループ3人)
〈グループで〉
書く
(一人ひとりが一件一葉に)

一覧一望
(不明瞭な部分への質疑応答、個々に)

評価
打ち、ときに打ち)

討論

統合

– – 集合 – –
(10人)
〈グループで〉
評価
打ち、ときに打ち)

討論

統合

  上をちょっと見るといかにも煩雑そうだが、実はシンプルなものだ。 要は 「個」と「全」 の仕分けにある。 したがって、慣れればわけなくできる。 組革研はこれによって運営され、はや500回を超えていることはご承知のとおりだ。
  あらゆる手法は、その使い手が形式の虜になってしまっては生きない。 さりとて独り善がりに崩してしまってもだめだ。 その典型例がKJ法だ。 「KJ法」は 「事実の統合」という素晴らしい発想法なのだが、巷ではそれが 「観念の分類」という台無しなものにされてしまった。
  その手法が有する特性を確と押さえ、状況を見すえて自在に変形の試行錯誤を重ねていくことだ。 そのために、この連載の終りに 「個全システム」活用に際しての留意点を記しておく。
  その最大ポイントは、 「個」と「全」 のステージを曖昧にしないことだ。

  留意点(1) 日本のお家芸である 「摺り合わせ」とは逆だということ。
  摺り合わせでは多くの場合、今までの常識が巾を利かせ、個々人の個性を削り取っていく。 それに対して 「個全システム」は、個性どうしを向き合わせ、その統合による独創性を狙っているのだ。 私が 「衆合天才」と大げさに表現する所以はここにある。
  摺り合わせによって、見かけ上は一つの結論に達するだろう。 だが事と場合によっては、それらは妥協や諦めの産物であって、事の掘り下げにもならなければ、したがって個の思いの結集にはなりえない。 その弊害は実行段階におけるがたがたとなって現れてくる。
  ついでに記せば、共有化は、言葉の上っ面でわかったとなっても実現できることではない。 共有化ができていないことを互いに認識することがその出発点だ。
  いわんや多数決などであってはならない。 そんな観念は捨てること。 多数決イコール民主的だとする人がいるが、なんとも安っぽい話だ。 多数決は、①根本から利害が対立している、②大勢で話し合うことができない、③法の定めによる、 そのような場合の致しかたない方法ではないか。
  留意点(2) 「書く」に関して。 このハードルは四つ。
  ① なんで書く必要があるのかなどと抵抗する人がいる。 その価値をわかっていないからだが。
  ② 書くことを苦手とする人、むずかしく表現をする人がいる。 慣れれば容易に解決できるのだが。 どうしてもだめな場合には、喋らせて誰かが代筆することだ。
  ③ なるべく大きな紙に一件一葉で書く。 これを疎かにする人が多いが、これはこの手法の特性にかかわることだ。
  ④ 相談しないで独自に書く。
  留意点(3) 「」を打つに関して。
  ① 打てない人がいる。 慣れれば何でもないことなのだが、職場の中で最初にやるときには、戸惑いどころか抵抗に出会うと思う。 組革研からその声の一端を紹介する。

私たちは、チームリーダーから「を打て」と言われたのにばっかりつけていたんです。 本当に我われは、を付けるのが好きでをつけるのが嫌いなんですね。 反発がくるのを恐れて。
私たちのチームの若いメンバーが、何人もいる年配のメンバーの人が書いたものに対してを入れるというのが、ものすごいカルチャーショックでした。 それができるようになったことは、私たち全員にとって革新です。

  ② 相談しないで独自に打つ。

  最後に、 「個全システム」におけるリーダーの二つのトップダウンについて記しておく。
  トップダウン(1)  打ち(ときには打ち)の 「評価基準」を明確に明示する。
  評価基準は物差しだ。 物差しを共有していなければ評価はめちゃくちゃになってしまう。 なるべく大きな紙にていねいに大きく書いて掲示しておくこと。
  「評価基準」は、ミーティングの課題とメンバーが書いたものとのギャップを埋めるものである。
  リーダーがこれを明示するまえに、メンバー自身にそれを出させてみるのも大いによい。 ただし、それを決めるのはリーダーだ。
  トップダウン(2) 「分離」のグルーピング。
  グループ内では同質、グループ間では異質の集団になるように。 グルーピング後の移動は大いによい。 そのためにも、各メンバーの状態をよく見ていることだ。

17.4.8.

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