このコラムでは 「横から目線の組織化」 の連載中だが、急ぎ企業内リーダーに苦言を呈したく、今週は途中に割り込むことにした。 というのは、先週の組革研で 「メンバー参加」 94人中の十数人から上の見出しの言葉を聞かされたからである。
私が 「やっていただく」 に接したのは30年もまえだっただろうか、その名を知らぬ人はいないであろう某大企業の役員からであった。 彼は部下を脇にしながら、何度かこの言葉を口にした。 私の耳には未だその時のイントネーションが残っているかのようだ。
それ以降、この種の言を聞くことが加速化されていく。 今や企業内では日常の慣用語化しているらしい。 そのつど私は、あたかも条件反射のように 「あなたの会社では給料を払ってはいないんですか」 と言いたくなってくる。 ボランティアではあるまいし。
仕事を、組織の “上” から 「やっていただく」 と言われたらどういうことになるか。 “下” の受け止めは 「やってやる」 になってしまうではないか。
仕事はその主体である本人からすれば 「やる」 ものだ。 リーダーという “上” の立場からすれば 「やらせる」 ものだ。 ただし、「やらせる」 にはその主体者に正反対の結果をもたらす二種があることは、予てより私が主張してやまないところである。 その二種については拙著にゆずる。
“下” に対する言葉には 「やらせる」と「やってもらう」 の二面しかない。 とは言え、前者を避けて後者を加速させていく現状は、“上” が “下” を、あたかも(今までの)ロボットのように道具として、思うように使っていく、動かしていこうとする目論見を躱そうとする、あるいは和らげようとするところから生じているのではないのか。
それに加えて、全ては 「教える、説明する、指示する、世話をやく」 である。
「やっていただく」+「教・説・指・世」 の日々を過ごしたら、人びとはどうなっていくか。 仕事の全て、問題の全てが他人事になっていくのは当然の成り行きであろう。
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