今週は、客を訪問して 「不在、不在、不在」 のDさん。
模造紙を壁一面に貼り出したときであった。 Kが促しても、状況を話そうとはしない。 じゃ自分で書いてくれとマジックを差し出すのだが、受け取ろうともしない。 「やってないから言えないのか、字が書けないのか、俺をなめているのか、どっちなんだ」。 でもDは黙っている。
やっとのことで書いた模造紙には、 「午後4時不在」 「午後5時不在」 「午後6時不在」 が、これでもかというような大文字で並ぶ。 同じユーザーにそれが何日も続いている。 「D君、不在が続いているが、何か説明はないのか」。 黙っている。…… 「なめとるかてめえ!」 と同時に、パンチが飛んだ。
「所長、Dがもうユーザーカードを回らんと言ってますよ!」 と、別なセールスマンが伝えてきた。 すぐにDを呼んで聞いてみると、 「そうだよ。こんなもん回ったって、ユーザーは文句ばっかり言っておるよ。 ああいう人たちが、またうちの車を買うわけないよ」。
問答無用とばかりに、KはDの向こうズネを蹴り上げた。 「このカードがどんなカードか、わかっとるんか。 お前に渡る前に、どれだけのセールスが汗して、涙で引き継いできたものか。 がんばって、がんばって、それでも挫折して、セールスを辞めていった人たちのものだ。 俺は組合をやっていて、その人たちを一人ひとり見送った。 お前みたいなばかが引き継いだと知ったら、その人たちは死ぬにも死ねんわ」。 またもやKは蹴り上げていた。
話はとんで、 「僕トップセールスになるよ」 宣言のしばらく後である。 雑談をしていると、 「所長は僕が本当にトップセールスになると思ってないでしょ。 僕をおだてて売らせようとしているだけでしょ」 と言うのである。 Dの胸ぐらをつかんだKは、彼を湯沸し室に引き入れ、 「俺の言葉のどこに噓がある。 もう投げ出したいのなら、この包丁で俺を刺せ。 それとも自分が死ぬか」。
こんなことが一度ならずであった。 聞こえよがしに、 「どうせ僕はトップセールスはむりだよ。 みんなそう思っているでしょ」 とか言っているのである。 そのつどKはDを壁に押しつけ、 「夢を捨ててどうなる。 お前らはもう逃げられないんだ。 俺が逃げたり変わったりすることは、絶対にない」 と。
「Dはさみしかったに違いない」、 「本当だな、本当だな、僕を見捨てることはないな、今もその気は変わってないですね」 と、殴られることによってそれを確かめていたのではないか、とKは振り返る。
[このコラムの読者の一部の人に申します。 3週続いて暴力振いの話ですが、それを是としているのではありません。 来週に続く]
( 『人を人として』 第五章二より抜粋)
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