管理というマネジメントによる果てしない状況の 「間接化」──。 それは、人びとが問題だらけの状況を生々しく感じるのを封じるがごとくにして、人びとと状況との相互作用を断ったまま、即ち、人びとをして困らせないことに意を注ぎ、人びとを思うように動かしていこうとするものである。
「道具力」 を出させるのにとって妨げとして作用しかねないと思われるものは取り除かれ、それ向きな状況に変換されて人びとに与えられていく。 総ては上から、教えられ、説明されていくことになる。 そこでは、人びとが問題だらけの状況を生々しく自分で感じる場はきわめて限られる。
この行きかたは、過保護と言われるものと同類項にある。 幼児を砂場で遊ばせるのに、傍に救急箱を用意し、先に自分が砂場に入ってくぎや缶のリップなどの不純物を取り除くというようなお母さんが増えているそうだ。 たしかに今日、処々危険だらけ。 それだけにこのお母さんたちの動きには同感せざるをえない。 だがそれが過ぎれば、愛する我が子と状況との相互作用を断ってしまうことになる。 そうなれば檻の中の動物と同じだ。
それらによる意図せざる結果として、声高に叫ばれている危機感を横目に、現実を直視せよの掛け声とは裏腹に、人びとをして、問題が生々しく迫ることのない、困ることのない、じっとしていても済んでいく状況、 「人間力」 の発揮を“強制”されない状況に陥ってしまっているのである。
「人を道具として」 の人間観に拠るが故に、状況が人を動かすことを察することができず、人びとと状況との相互作用の無い中で、無理矢理に人びとを動かそうとする不毛な工夫に終始しているのだ。
人びとは、説明された状況ではなく、自分で感じた状況で動くのだ。 頭でわかって動くのではなく、心で感じて動くのだ。
例えば今 (4年まえ) 、社会的大問題となっている原子力発電所事故に端を発すること一つをとってみても、それは明らかだ。 産地の人たちの必死なまでの、そして行政の当然の努力にもかかわらず、消費者は事故現場に近い食品を敬遠し、遠い産地のものを求めている。 「いくら科学的な根拠を示してもらっても、検査済みだと言われても、子どもを守りたいが勝ってどうしても買えません。 ごめんなさい」 とは、ある主婦の生の声。
ついでに記せば、参加の、チームワークの、コミュニケーションの、組織活動の総ての基盤をなすものは、この状況の生々しい共有である。 これなくして真のそれらはありえない。
次週のこのコラムでは、その具体的一例を紹介したい。
( 『人間力』 第六章三より抜粋、少し加筆)
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