管理によって人びとを動かしていくやりかたは、ロボットを動かす原理と同類項にある。 「人間力」 を抑えて 「道具力」 を限りなく出させる工夫の連続だ。 これによって人びとは、 「人間力」 の発揮がきわめてできにくく、ひたすら 「道具力」 によって動かざるをえなくなっているのである。
主体性とか創造性という言葉を私が耳にしてからでも50年が経つ。 資源のない日本ではとりわけそれが大事だと言われ続けてきた。 しかし、それらを求めて一生懸命にやってきた努力は、その意図とはおよそ逆さまの状態、人びとをして主体的にならないような、創造的にならないような、個性的にならないような、即ち 「人間力」 を枯れさせていくという途に陥ってきたのである。
その結果としての今日の人びとの状態を見ながらも、依然としてそれを生み出しているものの正体に気づかぬのか、なお一生懸命に今までを延長しているのが、企業をはじめとするこの社会だ。
マネジメントは、理念/リーダー/制度・仕組み・方法という三部面から成り立っている。 制度・仕組み・手法を以ってマネジメントだと思っているらしい人が未だいるが、頓珍漢もいいところだ。
理念についてはここではさておく。
私はよく織物に例える。 織物はタテ糸とヨコ糸から成る。 マネジメントも、リーダーというタテ糸と制度・仕組み・方法というヨコ糸の織なしから成る。 タテヨコそれぞれの重要さは、織物の場合は50 50であろうが、マネジメントの場合は、リーダーというタテ糸が70~80、制度・仕組み・方法というヨコ糸は20~30というところであろうか。 この比重は企業規模によっても変わってくるのだが。
制度・仕組み・方法は、リーダーがそれに寄り掛れば管理の機能を発揮し、リーダーが主体的であればマネジメントの道具としての機能を発揮しうる。 しかも今日のこの国の企業には、それほど劣悪な制度・仕組みは存在しないであろう。
ということは、マネジメントはリーダーの有り様によってどうにでもなる、ということである。
( 『人間力』 第四章三より抜粋)
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