学校教育などで外から注入された知識は、人びとの中でどうなっていくか。 いずれも否定的に相関連する二つの部面を記す。
その一は、知識はことの真理に近づくための道具であるにもかかわらず、外から注入されて頭に入った知識は、 「わかった」 となって、より深くわかることを妨げる働きをしてしまうらしいことである。
私はこれを 「知識抗体」 現象と名付けている。
あたかも予防接種のごときであって、ありあり性を失なった言語知識という “抗原” が、頭に入って間もなく “抗体” と化し、その後に本格的に入ってくるであろう知識に対して免疫の作用をしてしまうらしいことである。 もっと深くわかる、あるいは発見に連なる機会に遭遇しても、それを捉えるどころか、頭に詰まっている知識に囚われ、それが邪魔をして、新しいものを受け容れないか、たとえ受け容れてもそれを活性化させないように作用してしまうらしいことである。
そこら中にいる自任インテリを見れば、この現象にすぐ気がつくはずだ。 教科書を “神様” とさせられてきた彼、彼女らは、目の前の事実ではなく、教科書を詰め込んだ自分の頭を “神様” にしてしまうのである。
もちろん、総ての場合にそれが “抗体” と化してしまうわけではない。 最初に注入される少量の知識がさらに知識を生んでいくこともある。 学校教育はそれを前提に構築されているのだろうが、現実には、抗体化現象がはるかにそれを圧倒しているようだ。
組革研での体験は、そこに参加する総ての人たちにとって、全く初めてのものである。 すると何が起きるか。 納得できないからやれないと言う人が出てくる。 納得できることだけをやっていたのでは革新にも研究にもならないではないかと言うのだが、彼らはなかなか耳を貸そうとはしない、というよりもそうできないらしい。 自分の頭にある過去のものだけにすがって、未知、未体験の世界からは逃げようとするのである。
その二は、頭の中で観念として固定化し、目の前の事実を見なく、いや見えなくしてしまうらしいことである。
事実に対して視界ゼロとなってしまった結果、何事に対しても一つの見かた、一つの受け止めかた、一つの理解、一つの仮説しかできなくなってしまうらしい。 毎月の組革研での最初は、それの展示会がごとき状態である。
知識は、我われ人間にとって諸刃の剣なのかもしれない。
( 『人間力』 第四章二より抜粋に加筆)
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