リーダーの構えには、外見上は相反する二つがある。 “仏” と “鬼” である。前者を母親的、後者を父親的と表現してもよい。 と言っても後者は、一、二世代まえまでの父親ということになろうか。
“仏” の構えとは、優しさ、褒める、励ます、認めるなど、どちらかと言えば情的なものを指している。 これらは実に肌触りのいいものであって、人間ならば、その程度はともかく、これに接して感動しない人はいないであろう。 私もその例外ではない。
偽仏が横行しているが、そんなものは論外だ。
“鬼” の構えとは、 「易きを許さない」 という、どちらかと言えば理的なものを指している。 人びとをして 「やらざるをえない」 ところへと追い込んでいくという、 「人を人として」 の人間観から生じる構えである。
我われは、追い込まれると、やらずともよい理由、できない理由を並べたててはいられなくなる。 言い訳をして済ませてはいられなくなる。 問題と闘うか逃げるかの二者択一に迫られることになる。
多くの人は奥底では逃げるよりも闘いたいと願っている、と確信してよいのではなかろうか。
そのような日々には山あり谷あり、悪戦苦闘も多々あろう。 このような中では、“生産的” 欲求は “消費的” 欲求に負けてはいられない。 否応なく、眠っている 「人間力」 の種子はたたき起こされていく。 それによって、発見に驚くことがあろう、何かを生み出して感動に身震いすることにもなろう。 あるいは、力足らずしてか運悪しくしてか、達成できなくて悔しい思いをするかもしれない。 しかしその悔しさは、次なる力を生み出す。 そこにまた言い知れぬ心の波動が残る。 己の存在を実感し、人生の臨場感を味わうことになる。
リーダーの仏の構えからも鬼の構えからも共に、人びとに感動が生まれる。 その点では同じだが、この両者がその先にもたらすものは逆だ。 その逆が、人びとに甚大な影響を与えていくことになる。 それは、仏によるそれが他から与えられる感動であるのに対し、鬼によるそれは自足の感動であるというところにある。
感動を求めて、我われ人間は生きている。 日々、その連続でありたい。 仏に馴らされた人はそれを、己の内に生み出すことはできず、他に待つことになる。 仏の構えはつまり、人びとを弱いものにしかねないのだ。 鬼に馴れた人はそれを、たえず己の内で生み出そうとしていく。 鬼の構えはつまり、人びとを強いものにしていくことになるのだ。
( 『人間力』 第七章六より抜粋にごく少し加筆)
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