「ロボット症」 は、本もののロボットより始末が悪いのだ。 というのは、人としてだめなところだけは依然として人間らしいからである。
そのだめなところは数あろうが、私にとってとくに目に付くのが次の三つだ。
一つ。 自由、主体性、個性、これらは人としての素晴しい状態である。 自分勝手、自己中心、自分都合、これらは望ましからざる状態である。 この両者の区別が無くなって、まるで同一化されてしまっているがごとき状態である。
一つ。 依存症、というよりも 「やってもらう病」 とでも言ったほうがよいかもしれない。
部下を率いて仕事をしている企業人の組革研でのことである。 箱根一帯は国立公園になっており、休日ともなれば家族連れで賑わう。 道路もそれなりに整備されているのだが処々、樹木の切り株などが道端に顔を出している。 それにつまずいて転んでしまったという。 これだけならばよくあること、呆れたのはその後だ。 「ああいうものを、どうして取り除いておいてくれなかったのか」 と、サービスセンターに文句を言ってきたというのである。
痛い思いをして腹が立ったのはわかるとしよう。 他に何か不満があったのかもしれない。 しかしこの途方もない要求を支える彼の頭の中には、俺の身の安全は誰かが守っているはずだという、無意識の下地があるのではないか。
組革研では 「S-20」 で屋外を歩く。 このときよく出てくる発言が 「主催者は (俺の) 安全をどう守っているのか? 」 である。 こういう人に特徴的なのが、安全のルールを守ろうとしないことだ。
たばこを止められず、健康を害され、家庭でも職場でも嫌がられるのは 「たばこを売っているからいけないんだ」 と、たばこ会社を訴えた人たちがいた。 これを新聞で読んだときには、冗談半分でのことかと思った。 ところがこの人たちが地方裁判所に入っていく姿をテレビで見て、呆気にとられた。 立派な紳士が真面な顔をしているではないか。
私もかつてヘビースモーカーであったから、たばこが止められないのはわかる。 私が驚いたのはそれではなく、自分自身の問題の解決を、堂々と他に強要していることにある。 「どうして木の切り株を取り除いておいてくれなかったのか」 と瓜二つではないか。
一つ。 ロボットならばソフトウェアの差換えによって動きを変えることができるが、 「ロボット症」 にはそれが利かなくなっていることである。 頭の中が過去の知識でかちんかちんらしいのだ。
我われの頭の中のものはたえず古い。 と言って語弊があるならば、持ち合わせている知識は昨日までのものだと言えばよいか。 それに対して、我われが日々直面する事態はたえず新しい。 とりわけ仕事の中では、これほどの環境激変下、過去と同一ということは少ない。
したがって多くの場合、即対応はできないはずだ。 問題は何かと改めて考えてみなければならない。 ところが、そのように動ける人を見かけることは稀でしかなくなってきているのである。
( 『人間力』 第三章四より抜粋に加筆)
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