人びとが今目のまえで示している現象は、その人のそれまでの 「毎日」 がどうあったかの縮図なのである。 それは、その人にまつわる文化――ものの見かたや考えかた、発想や行動のしかた、マナーや言葉づかい、人相までも、その果ては心身の総てにまで及ぶ。 映画史に輝かしいチャールズ・チャップリンは、80年もまえの 『モダン・タイムス』 で既に、その辺のところをユーモラスに描いていた。 脳科学者の松本元氏 (理化学研究所脳科学総合研究センター・ディレクター・当時) は、 「われわれが社会慣習から知らず知らずに脳に常識として創りあげてしまうものはこの繰り返し学習に依るもの」 と言っている*1。
人びとの 「毎日」 は、 「人間力」 発揮トレーニングの場となっているか、それとも 「道具力」 発揮トレーニングの場と化してしまってはいないか。
「人を道具として」 の下で生産要素となった人びとは、 「人を大事に」 の言葉とは裏腹に、 「人間力」 を発揮する必要には迫られることなく、 「道具力」 によってロボットのように動いていく必要に迫られているのである。 「ロボット症」 は即ち、人びとのその 「毎日」 に対する正常反応なのだ。異常反応ではない。
ある著名な企業のトップが雑談の中で、 「今までは人間力を出してもらいたくはなかったんだ」 と述懐していたのを思い出す。 世界のIBMを築き上げたトーマス・ワトソン二世も、 「大組織の中で大きな仕事を完成した人びとも、もし要請されたものが小さいものだったら、小さい仕事しか果たせなかっただろう。 彼らの能力や個性の力を少ししか発揮できなかったであろう」 と、求められることの重要性を訴えている*2。
「人間力」 を求められることなく 「道具力」 を求められる 「毎日」 とあっては、人びとは心の働きを忘れて、いつの間にか 「ロボットらしく」 なっていくのは当りまえではないか。
ロボットが 「道具力」 を出さなければその存在価値はない。 それと等しく、人間が 「人間力」 を出せないでいることは生ける屍だ。
*1 月刊『言語/脳のこころ⑤』(1999年5月)大修館書店
*2 Thomas J.Watson Jr.『A Business and its Beliefs, The ideas that helped build IBM』/土居武夫訳『企業よ信念をもて』(1963年)竹内書店新社
(『人間力』第四章一より抜粋に加筆)
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