拙書 『人間力』 の第一章で 「人・仕事関係」 という概念にふれ、それが人間らしいものであるかロボットみたいなものであるかと記した。この 「人・仕事関係」 の 「場」 こそが、人びとの 「人間力」 を育む場ともなり、一転して、「人間力」 をフリーズさせて 「道具力」 を出させ、「ロボット症」 を生み出していく場ともなるのである。
学徒の場合は 「人・勉強関係」 の 「場」 ということになる。
我われ人間の毎日の大部分は 「生産生活」 にある、と同書に記した。 ということは、「人・仕事関係」 の場とは人びとの 「毎日そのもの」 であるということになる。
我われ人間はその 「毎日」 の中で、自分に有する力のうち、必要に迫られる力だけを出し、必要に迫られない力はけっして出さない。
出さない、つまり使わない力は衰えていく。
16年まえの三条市における少女行方不明の事件を思い出す。 小学生の時に狂気の男によって誘拐され、柏崎市内で探し出された時には既に19歳になっていた。 9年もの間、小部屋に監禁され続け、歩くことは皆無であったという。 発見された数か月後の三条市長からの手紙には、 「おかげさまで彼女はこの度、成人式を迎えることができました。 この頃やっと歩けるようになりましたが、まだ階段の昇り降りはおぼつかないのです」 と認められていた。 長きにわたって足を使わなかったからである。
脳の老化は頭を使わないことによるそうだ。 高田明和氏 (浜松医科大学名誉教授) は 「放っておけばどんどん老化は進む。 特に脳はそうである」 と。 眼帯をかけていると日に日に視力は落ちていくそうだ。 動物園で育った動物は自分で餌を捕ることができないという。 「ひ」 音を使わない子ども生活を送ったちゃきちゃき江戸っ子の私は、未だに 「し」 と 「ひ」 の区別がときにあやしい。
出す、つまり使う力は伸びていく。
「頭を使い、運動することで脳の神経細胞が増殖し、再生される」 という。 アフリカやインドには視力の4.0、5.0は言うに及ばず、8.0の人がいるそうだ。 視界を遮ぎるものが少なく、遠くを見ることが多いからであろう。 足腰や筋力、言うに及ばず。
以上をまとめて表せば、我われ人間は毎日、 「必要に迫られる力だけを出し、必要に迫られない力はけっして出さない。 出す力は伸びるが、出さない力は衰えていく」 ということである。
ということは、我われ人間の 「毎日」 は、実は、自分自身が 「いつの間にか変身していく必定たる『トレーニング』の場である」 ということだ。 意図せず、意識せずしてである。
ああだこうだと、教えられ続け、説明され続け、指示され続け、世話をやかれ続けられた中から生まれてきたのが、人びとの 「ロボット症」 なのである。
(『人間力』 第四章一より抜粋に加筆)
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