「人を道具として」 の人間観から生み出されるものが、人間のロボット症候群、略して 「ロボット症」 である。 この五文字は米国の社会病理学者であるルイス・ヤブロンスキー氏のものだが、今日のこの社会の一般的な人びとの状態を括って表すのに、私はこの表現をよく借りている。
「ロボット症」 とは、人間が人間らしさを失って 「ロボットらしく」 なっているということだ。
人間とは? などと言いだしたら、とてつもない深みにはまってしまう。 とてもじゃないが私の手には負えない。 ところがその有り様、少なくとも動きのレベルでのそれを、明解に示してくれる恰好の比較対象が存在するのである。 ロボットがそれだ。
ロボットはどうあるか。
まず夢を持たない。 問題を背負うこともなければ、したがって悩むこともない。 困っているロボットなど見たことがない。 問題意識もなければ、疑問も持たない。 やる気もなければ、さぼる気もない。 自発的に動くことはなく、他力を加えないと動かない。 力を加えてさえいれば、それが作用する範囲内でいつまでも動く。 指示・命令どおり完璧に動く。 間違いなど起こさない、というよりも起こせない。 頭でわかっていることだけをやり、わかっていないことは何一つやらない。 状況が変わっても、けっしてそれには対応しない。
これに対して人間、と言っても本来の人間はどうか。
まず、夢を持たずにはいられない。 問題を背負って悩みは果てない。 困っていること日々のごとしだ。 問題意識は募り、頭の中は疑問でいっぱいだ。 やる気もあれば、さぼる気もある。 他力によって動くとは限らず、しかし自発的に動く。 指示・命令どおり完璧に動くのは難しい。 よく間違いを起こす。 頭でわかっていないことでも、やらざるをえなくなればやる。 状況が変われば、即それに対応する。
即ち、人間とロボットでは正反対の属性を持っているのであって、ロボットの反対を思い浮かべれば、人間の有り様がわかるというわけだ。
この両者の違いを煎じ詰めて一言にしてしまえば、心の存在の有りや否やということになる。 つまり、人間には己とその気があるのに対して、ロボットにはそれらはないのだ。 したがって、ロボットはたえず他力を加えられ続けないと― 教えられ続け、説明され続け、指示され続け、世話され続けないと動かない、いや動けないということである。
人びとが、心の働きという人間としての本質、即ち人性を失いかけつつ、他力によってその作用が及ぶ範囲内で画一的に動くという存在になりつつある、ということである。
今日、このような人びとのなんと多いことか。
( 『人間力』 第三章一より抜粋に加筆)
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