「対象」の概念を説明するのに、私はよく下図を用いている。名付けて「対象三角形」。
対応する対象は幾つか(も)ある。にもかかわらず二つに絞ることには、二つの理由がある。一つは、対応すべき対象の優先順位を探ることになるからである。もう一つは、二つに絞ることによって考えやすくなるからである。天才の場合はこの限りでないかもしれない。
私はよく、料理づくりという仕事を例にして説明する。誰にでもわかりやすいから。上図右のように、まず最初に捉えるべき対象は、「食べる人」と「食材」である。料理づくりという仕事をひと言で表すと、食べる人と食材をより良く結び合わせることである。よりローコストで。
一方の食べる人。赤ちゃんなのか成人なのか要介護老人なのか、健康人なのか病人なのか、栄養やカロリーはどうなのか、どんなものを食べたいのか。他方の食材。なすやきゅうりはどういう野菜なのか、鰯や鮪はどういう魚なのか、牛や鶏はどういう肉なのか、それは入手できるか価格はどれほどなのか、……等々。
それらを知らずして料理を作ったとしたら、どういうことになるか。三ツ星レストランの名コックが極上ステーキを焼いたら食べる人が歯の不自由な老人だったとなったら。キャビアをふんだんに使う料理を考えたらコストは。
セールスという仕事を表すと、上図左のようになる。対応に研究・開発を入れれば、対象には市場ニーズと技術シードが入る。製造オペレーションを入れれば、設備とそこを流れる物。人事と入れれば、人と経営ニーズ。マネジメントと入れれば、仕事と部下の状況が入ってくる。
いずれも、その仕事の対象を全体として捉えた場合の例である。対応の進行段階に伴って、対象は部分に限定されてくる。
くり返して記すが、二つの「対象」をできるかぎり理想的に結び合わせる、それも限りなくローコストに近づけるべくすすめていくのが「対応」なのである。
対象と対応は反対側の存在だ。料理づくりの例では、食べる側と作る側。セールスの例では、買う側と売る側だ。(わかりやすく表現するために対象の一方のみを例にした)。対象の概念無き故に、この「反対」を意識できず、即対応になってしまうらしいのである。
<次週に続く>
(『人間力』第九章一より抜粋、少し加筆)
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